横浜「欠陥マンション」は氷山の一角。大手業者も安心できないカラクリを宅建士が解説

横浜マンション群 旭化成建材のデータ偽装問題は、一つのマンションの傾き問題にとどまらず、自治体の独自調査によって、全国規模の問題となりつつある。まさに2004年に起きた姉歯事件以来、或いはそれを超える衝撃といってよいだろう。

 騒動の渦中の11月2日に、『訳あり物件の見抜き方』(ポプラ新書)の著者である宅建士の南野真宏氏を取材した。1990年に宅建資格をとって25年間、公私において数々の訳あり物件に悩まされた人物でもある。

「下請任せの構図と利害関係者のもたれ合いの縮図が露呈したと言えるのではないでしょうか。大規模マンションという、ある種モノづくりの象徴であるにも拘わらず、事業主も、施工主も、工程管理会社も、ロクに現場を見ずに、杭打ち施行について旭化成に任せっぱなしだったわけです。注視しているのは工期通りに進行しているかどうか。そんな構図の中で、杭の長さが足りません、工期が延びますとはなかなか言い出せない。杭は、必要荷重に対して、場所ごとに一本一本、長さ・断面・強度が違うので、作り直すとなると時間もかかる。そんな話を旭化成建材が日立テクノロジーに、日立テクノロジーが三井住友建設に、三井住友建設が三井不動産レジデンシャルに伝えていくのは並大抵ではない。責任とれるのかという話になる。

それでは、住民が可哀相という話になるのでしょうが、工期の遅れに住宅販売会社が敏感な理由は、予定していた入居時期が遅れると入居者が既に前の家を解約しただの売却済だのと損害賠償請求してくるからです。だったら、皆、工期を予定調和で済ませようと考える。夫々の利害関係の縮図がここにあるわけです。たまたま今回は、目に見える形で欠陥が出てしまったので露見したに過ぎません」

 騒動が広がりを見せている一方で、『パークシティLaLa横浜』については、三井不動産が建て替えと慰謝料の支払いを打ち出したことで、事態は収束に向かいつつある。建て替え期間中、別の場所に住む不便はあるにせよ、総費用300億円とも言われる建て替えと慰謝料に勝る補償はないからだ。「やっぱり財閥系の不動産会社から買うと安心!!」という評判も巷で立ちつつあり、壮大な宣伝を見せられている気すらする。

 しかし、忘れてはいけないのは、「建物が傾いた」という住民の訴えを受けて、三井不動産レジデンシャル側が、当初は「東日本大震災の影響だと思われる」と抗弁していたことである。同社としては、それで突っぱねられれば事なきを得たものの、業を煮やした住民側が横浜市に訴えたことで事態が公となり、結果、土俵際で起死回生のうっちゃりを決めざるをえなかったのである。

 約10年前に起きた、やはり財閥系の三菱地所が開発したOAPレジデンスタワーの土壌汚染問題においても、同様の展開があった。OAPは、大阪城の程近くに存在する複合施設である。三菱マテリアル(旧三菱金属)大阪精錬所の跡地約5haを同社と三菱地所が共同開発したもので、オフィス棟とホテル棟、そして住宅棟のOAPレジデンスタワー東館と西館が建っている。そのOAPの地中で、基準値の20倍に相当するヒ素や、基準値の64倍に相当するセレン等の重金属が検出されていたにも拘わらず、居住者の健康に実質的な被害がないと考え、重要事項にあたらないと判断。その事実をレジデンスタワー2棟518戸の購入者に故意に告げなかった為、先の二社が大阪府警の家宅捜索を受けたのは、2004年のことである。

 最終的には、消費者の経済的な利益を守る立場から重要事項として告知すべき義務があったことを認めた三菱側が、マンション管理組合との間で、購入価格の25%を補償し、また希望者には買い取りに応じる内容で合意したことで、関係者全員が起訴猶予処分となり、事件自体は終結している。三菱地所が支払った補償費用は約75億円にのぼったという。

 抗弁が公に認められないと情勢分析してはじめて、建て直しや買取り、補償といった消費者保護策を打ち出したのは、三菱も三井も同じである。つまり、潤沢な資金を持つ業界最王手クラスの会社でも、安易に補償を容認する訳ではないのだ。ましてや、準大手クラスや弱小クラスでは、守るブランドよりも、目先の利益の方が大事なので、自らの非を認めないケースの方が多いだろう。訳あり物件を“訳あり”と認めさせるのは思いのほか難しいのである。 <取材・文/日刊SPA!取材班>

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