東大推薦入試導入、予備校業界はどう見ている?

今回の入試改革で、東大は真の天才をすくい上げることができるのか? 撮影/日刊SPA!取材班

 11月2日から6日にかけて、日本の最高学府の頂点に立つ東京大学(東京都文京区)が、創立138年目にして初めて導入する「推薦入試」の出願受け付けを行った。

 先頃、英教育専門誌『タイムズ・ハイヤー・エデュケーション』が発表した「2015年・世界大学ランキング」では、5年連続1位を獲得したカリフォルニア工科大学から大きく引き離され、“Fランク”さながらの43位(前年度23位)という低評価に甘んじていた東大……。近年、グローバル化の波に取り残されつつあっただけに、今回の入試改革は、まさに生き残りを懸けた起死回生の試みと言えよう。

 今回、導入される推薦入試は、全10学部でそれぞれ募集人員が異なるものの、1学年全体の3%程度にあたる約100人が対象。書類審査後、12月1日には一次選考合格者が発表され、通過者は学部ごとに面接やグループ・ディスカッションで振るいにかけられるという。新ルールでは、推薦できるのは高校ごとに男女各1名のみ。センター試験の得点は「8割以上」が目安となっており、学部によっては「科学五輪で顕著な成績」「商品レベルのソフトウェア開発経験」など、かなりハイスペックな募集要件が掲げられているのが特徴だ。

 時に、お勉強のできる紋切り型の秀才ばかりが集まっている……などと、批判にさらされることもあった東大だが、今回の入試改革で、今後世界と伍して戦えるような型破りな“天才”を発掘することができるのか? 来春以降、その成果がじわじわと出てくることを期待したいところだ。

 ただ、このドラスティックな改革を悠長に眺めていられないのが、予備校業界とも言えるだろう。実際、京都大学でも来年度の入試から「特色入試」を導入することもあって、大手予備校などでは特設サイトを設けたり、通常のAO入試対策を掲げたコースの拡充をはかる動きも出てきているが、今回の東大入試改革を“受験のプロ”はどう見ているのか? 今回、駿台予備学校の進学情報センター長を務める石原賢一さんに話を聞いた。

――東大はどのような思惑から、今回の推薦入試を実施すると考えるか。

石原:そもそも、これまでの東大入試の問題点として、近年の入学者が関東圏の生徒に偏っていることが挙げられます。この流れは、地方の少子化が顕著であるのと、経済的な面も含めて「地元の国公立大学志向」の流れが影響しており、これを一度改めて、広く全国から生徒を募りたいという思惑が東大にあったのでしょう。加えて、これまでの入試制度では、特定の科目だけ突出して優れているといった生徒よりも、5教科、ないしは4教科の科目をバランスよく得点できるような生徒が合格しやすいため、どうしても平均化された「金太郎飴」のような子が多くなる傾向があった。受験という観点でいうと、得意な分野を伸ばすより、不得意な教科や項目を一つずつ塗り潰していくほうが試験はパスしやすいんです。だからこそ、そういう地道な努力で学力を身につけてきた子たちはまだ見ぬ才能を持っている反面、なかには、いざ東大に入ってからこじんまりとまとまってしまう子もいる。学習能力が高い子が集まるという点では結構なことだと思うのですが、彼ら平均化された秀才の集団に、科学五輪に出場した経験のある子や学校外でボランティア活動に没頭していた経験のあるような、ちょっと違う路線の子を入れることができたら、いい意味での“化学反応”が起きて、学生同士が交流することで覚醒し合い、大学全体が活性化するという見立てもあったのではないか。決して、一本釣りで「スーパー高校生」を獲得しようといったことではないでしょうね。

――「センター試験の得点が8割以上」が目安で、「科学五輪の出場経験」という募集要件を見ていると、まだまだ「狭き門」のように映るが。

石原:東大を目指す子にとっては、決して高いハードルではないと思いますよ。例えば今春のセンター試験を基準に考えると、文系最難関の文科Ⅰ類で合格者の平均得点率は90%。文科Ⅱ類、Ⅲ類でそれぞれ89%、88%です。理系は理科Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ類が91%、90%、94%なので、「センター試験8割以上」という条件は、東大に入る生徒にとっては「屁でもない」と言っていいライン。逆にいえば、東大はこの合格ラインを10%程度落としてでも、特色のある生徒を獲りたいという考えなのでしょう。まぁ、応募者があまりにも多いと選考する側の時間も労力もかかるので、これくらいのラインが適当なのではないか。今年やってみて、その後はこのセンター試験の基準ラインはさじ加減で調整すると思います。

――「100人」の推薦枠を狙う受験生は多いと予想していたか。

石原:東大側は、500~600名程度が推薦入試にチャレンジすると考えていたのかもしれませんが、東大志望者の9割近くが受けている東大入試実戦模試受験生へのアンケートを見る限り、250~350人くらいしか挑戦しないだろうと思っていました。ただ、11月9日に東大から発表された推薦入試出願状況によると、さらに少ない173人に留まった……。理由は、単にレベルが高いということに加えて、実は、募集要項にある「男女各1人」という条件が思いのほか厳しいと思うからです。現在の高等学校のシステムでは、多くの場合高校2年の頭から文科系と理科系のカリキュラムに分けられます。そうすると、同じ男子で法学部に行きたい人と、医学部に行きたい人でそれぞれ1人を選ぶというのは、高校の現場では至難の業。結局、学校側は総合的な成績で選ぶしかないわけで、文科系理科系のどちらを優先するかは判断しづらい。つまり、文理でそれぞれ1人ずつのほうが、学校側から見たら選別がしやすかった。東大は女子の入学者が少ないから「男女1名」という条件にこだわったんでしょうが、むしろ、それが高校での選考の足かせになってしまった気がします。京都大学も今回から「特色入試」を始めましたが、こちらはAOといって「自己推薦」がほとんどなのでこういった問題は生じませんが、東大の新ルールでは、高校の先生が選んでくれて初めて推薦入試にエントリーできるので、生徒を実際に推薦する高校側は正直「煩わしい」というのが本音だと思いますし、なかなか積極的に動いてくれなかったのではないでしょうか。

――二次選考では、「個別面接」や「グループ・ディスカッション」「プレゼンテーション」で受験生を見ると言われている。

石原:いかに自分にやる気があるかとか、人柄がいいかをアピールする場ではありません。推薦入試にエントリーした際、科学五輪出場の証明書や商品レベルのソフトウェア開発経験といった自分推しの資料を事前に提出するわけですから、受験生は、本当にその力が自分に備わっているかを面接官に対していかに証明できるかという点を評価されるわけです。本当に、買い手が付くようなソフト開発をしているなら、面接官が専門の先生であっても、面と向かって質問にすぐに答えられるはずですから。要は、生徒を獲る東大側から見れば、エビデンスを示してほしいわけです。出願の時点で厳しいことを要求されているから、志願理由書などには、けっこう大人(高校の先生)が手を入れていると思うんです。だからこそ、自分のキャリアを自分の言葉にして、面接やディスカッションに臨むことが大切なのではないでしょうか。

 狭き門より入れ、滅にいたる門は大きく、その路は廣く、之より入る者おほし――。フランスの小説家、アンドレ・ジッドがマタイによる福音書から引用した有名な一説だが、果たして、東大入試改革はこれまではじかれ続けてきた真の天才を“救い”上げることができるのか。しばらくは、見守る必要があるだろう。

<取材・文・撮影/日刊SPA!取材班>

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