秒殺!バイキング回転喰い!!

 久しぶりに、某大手出版社が主催する

コミック雑誌寄稿者忘年会
(正式名称ではない。なんとなくこんな感じの名前)

に出席した。

 毎年年末に開催される恒例のパーティで、
参加者は500人以上!(相当な目分量)

 某一流ホテルの大広間で行われ、
そのホテルに入っている数々の一流店がつくる絶品料理
バイキング形式で食わせてもらえるのが名物だ。

 もちろん、私もその日、その時間に標準を合わせ、
草野球で思いっきし体を動かしてから昼飯も抜いて、
飢えた野獣状態をMAXにまでもっていき、
会場へと向かった。

 ところが、
偉い人たちの長い挨拶を、
ワインをぐびぐび飲んで聞き流しながら、
場内で会った知人と軽い談笑を交わしていると、
不覚にも

バイキングスタート!
(そういう掛け声が実際にあるわけではない。挨拶と乾杯の音頭が終わった後、「それでは皆さん、お料理をお楽しみください」みたいなアナウンスが流れるのだ)

の合図を聞き逃し、先手を取り損なってしまった。

 すでに料理のスペースは長蛇の列。

 普段、仕事場に閉じこもって黙々と漫画を書き続けている
食べ盛りのアシスタント連中が、
ここぞとばかりにご馳走の山へと群がるのだ。

 しょうがなく私は、列の最後尾へといそいそと着く。

 スタート前のパトロールで目を付けていた

ラザーニヤ

が早くもあと二切れ分ほどしか残っていなくて、自然と

チッ!

という舌打ちが口から漏れる。

 並びながら、
料理を盛った皿をどう持てばよいのか、
で頭を悩ませる。

 片手に赤ワイン、そして用意されている皿は小皿のみ。

 一品一品をちょびちょび盛っても限界がある。

 いつもなら盛るだけ盛って、
それをうしろに控えている連れに渡し、
また新しい皿に盛っていく作戦をつかうのだが、
今回は、連れが仕事で到着が遅れており、
連係プレイを取ることができない。

 本当はワインを楽しみながら、
一流ホテルの味を堪能したいところだが、
あきらめてワインををイッキ飲みしてから、
空のグラスを赤ワインのような色のロングスカートを身につけた
コンパニオンのおねえさんが持つ銀のお盆に乗せ、
左手をフリーにする。

 その手で二皿目を取ろうとしたとき、
不意に名案が浮かんだ。

 小皿の代わりに箸を取る。

 そうだ! 
山をひとつひとつ回るごとに
取った料理を食べちゃえばいいんだ!!

 いわば、

回転寿司の逆バージョン(?)

である。

 これなら料理がなくなるまで半永久的に
料理スペースを回り続けることができる。

 なんと合理的でかつ、卑しい作戦であろう。

 完璧だ。

 結局、私は料理スペースを3回転し、
そのあとに、別スペースに設けられている
ローストビーフコーナーに二度並び、
寿司のコーナーでは三度並び、
東北の名物料理コーナーで
盛岡冷麺喜多方ラーメンきりたんぽせんべい汁
食べ比べ、デザートまで一通り手をつけて、

大満腹で大満足!

の一夜を過ごすことができたのであった。

 でも、さすがに食い過ぎたのか、
気持ち悪くなって二次会は途中でリタイア。

 アルコールで体調を悪くして吐きそう
になるのではなく、
胃に蓋ができないような状態で
中身がせり上がってくるような嘔吐感

をもよおしたのは、少なくとも40代になってからは初めてだ。

 帰りのタクシーで、高校時代、

ラーメン5杯を30分以内に食べたら無料!

と唱う店で、3杯目で店内に口からぶちまけてしまった
つらい想い出が、脳裏によぎった。

「ほどほどに……」

と、一次会の後半30分ごろに到着した連れが
となりで不機嫌そうに、つぶやいた。

PROFILE

山田ゴメス
山田ゴメス
1962年大阪府生まれ。マルチライター。エロからファッション、音楽&美術評論まで幅広く精通。西紋啓詞名義でイラストレーターとしても活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)
OL、学生、フリーター、キャバ嬢……1000人以上のナマの声からあぶり出された、オヤジらしく「モテる」話し方のマナーとコツを教えます

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