第55回

02年2月8日「ブルーバック公演とは」

・下北沢駅前劇場にて、「ロリータ男爵」の最新公演『恐るべき子供たち』。例の「プレミア・プロジェクト」に企画が採択された、つまりお国の支援作品だ(ノミネート責任者は八谷和彦さん)。

・ポイントは「ブルーバック公演」というアイデア。舞台上の背景や小道具や役者の衣装のところどころが青く塗られている。それでちょっと異様な芝居が繰り広げられるわけだが、DVD版ではそこの部分にブルーバック合成で別のものがはめ込まれている。公演を見た後でDVDを見たら別の意図が明らかになる、というわけ。

・舞台上には役者の他に椅子一個だけ、なんてスタイルの戯曲に傑作は数多くある。そういう場合、「観客のイマジネーション」が舞台美術の一部となっているわけだが、それをさらに映像テクノロジーと合成してしまおうというのがこの作品だ。といっても難しいものではなくて、なんというか幕が下りたらもう一刻も早くDVD見たくて家まで走って帰ってしまう、そんな面白さ。

・デジタル・コンテンツに限らず、例えば最近のアニメは、TVオンエアは宣伝として割り切り、DVDやビデオなどのパッケージ販売を課金システムとして使う、という形が一般的だ。演劇の世界でも、コンテンツ=公演の2次使用物としてのDVDやビデオが結構売れていて、公演は赤字でもこちらで元をとっている人気劇団も多いらしい。こういうところに、本当は新しい方法論が求められている。メディアをまたぐことが1次/2次の定義付けをしない、つまりそれぞれが別途に成立し、しかも相互的に面白さを加速する、そんなスタイルである。

02年2月9日「おてんとさまは見てる?」

・ネット上の監視システムは完成してるっていう都市伝説を聞いた。例えばどっかのBBSに匿名で書き込んでも、実は特定されて、個人ごとに密かに作成されているデータベースに蓄積されてるって。マンガ喫茶で書き込んでもちゃんと顔写真撮られて、それで人物特定されてるって話。

・このシステム、5年間は極秘に稼働させてデータをたっぷり蓄積しておいてからいきなりそれを全て公開するんだってよ。ひえー。なんか、こそこそやってた悪いことを死んだ後に閻魔さまの前で全部暴かれちゃうみたいな感じだね。

02年2月10日「お台場にも結構いますよね?」

・ノラ犬はすっかり見かけなくなったが、最近よくノラ牛を見かけますね。狂牛病騒ぎでちっとも売れなくなり、始末に困って酪農家が捨ててるらしい。毎朝、牛乳を直飲みさせてもらってるホームレスの人もいるらしい。ハイジみたいで楽しそう。

02年2月11日『新連載やります』

・講談社の若手編集者・太田さん来社。文芸方面だけではなくアニメやゲームなどについてもおたく的知識が膨大な、面白い人だ。「雨宮慶太さんが仮面ライダーを巨大化させたように、僕はビルXイツを巨大化させたい」と話してみたら「それいいですね」と盛り上がり、『メフィスト』という小説誌に連載させてもらうことになった。

・タイトルも決めたし(『怪人21世紀』)3月末発売号からさっそく載ります。

2004.05.17 |  第51回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。