第58回

02年2月26日「異色サッカーゲーム」

・エニックスでちょっと変わったサッカーゲームを見せてもらった。『日本代表選手になろう!』というタイトルから当然スポーツゲームかスポーツ系シミュレーションゲームかと思ったが、なんとサウンドノベル形式のアドベンチャーゲームだった。

・試合をしながら、画面上に交錯する言葉=「選手の思い」をすばやくつかまえる。「いけっ」とか「囲め!」とか。それが次のアクションの原動力となる。的確な、そして素早い判断によってゲームは勝ちパターンに入る、というわけ。小一時間程度プレイさせてもらったが、サッカーに興味のない僕でもかなりハマれそうだった(プレステ2対応、5月23日発売予定)。。

02年2月28日「日本映画史をアニメで」

・アニメ『千年女優』試写。往年のスター女優の回想が、彼女がかつて出演した様々な映画の名シーンに繋がっていく。「あの人が待っているから!」と叫びながら、ひたすら走る少女の姿が、記憶と映画と現実を串刺しにしていく。全体的に色味を抑えた緻密なアニメ画像が、全盛期の、世界にも注目されていた頃の日本映画の美しさをリプレイ&リニューアルしていく。

・青春映画、時代劇、怪獣映画……過去の様々な名画へのオマージュ・シーンが百出する。邦画の様式美を、若い今敏監督が研究しつくしているのは驚きだ。そしてアニメ的美少女のテイストを崩さずに実写映画的リアルな絵柄を極めていることも、成功の要因だと思う。

・オリジナリティーにこだわる人には揶揄されるかもしれないが、DJ的手法にもクリエイティビティーが確立している日本のアニメ界ならではの傑作だと思う。年配の映画人にも見せたいなあ。

02年3月6日「同じコージのよしみで」

・前出の講談社太田さんが、イラストレーター/漫画家の緒方剛志先生を紹介してくれた。『ブギーポップ』シリーズのイラストで知られてるあの人。若手だけどその世界では神とあがめられているお方だ。

・緒方さんがゲーム業界出身の人だということを僕は知らなかった。過去、いろんなところですれ違っていたみたいで、驚いた。超おたく編集者の太田さんと3人で、ゲームの昔話で深夜まで盛り上がってしまった。今ゲーム業界を舞台にした小説を書いているので、挿し絵をお願いしたら快諾して下さった。やったー。

・ところで太田さんが薦めてくれた『タイムスリップ森鴎外』(鯨統一郎/講談社ノベルズ)が面白かった。「十七人もの命を奪った」とここに書いとくだけで、このページにも検索客が増えそう。そのわけは……読んでみてこの本。

02年3月9日「バーチャル出演」

・『デジタル・スウィートホーム』という番組に出てくれと頼まれた。ユビキタス・コンピューティングをテーマにした特番(3月21日11:00~テレビ東京系OA予定)。

・スタッフは昔『PCランド』という番組を一緒に作っていたメンツだったので引き受けたかったんだけど、あいにくその収録日には別の仕事が入っていた。終わってからかけつけても、ちょっと間に合わない距離。ところが、別にスタジオに来なくてもいいと言う。裏技があるから、と。

・そして今日いよいよその裏技を実行してくれた。これが実に興味深い方法だった。撮影スタッフは、僕が別の仕事をしていた場所まで、合成用のブルーバックを持参してやって来たのだ。そしてその場にバーチャル・セットを急ごしらえしてくれちゃったのである。

・そこで撮った映像を、後でスタジオ映像と合成するわけだ。僕が他の出演者と一緒にスタジオにいるようような演出も可能らしい。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。