第77回

02年7月15日「勝手にお金を投げて下さい」

・前出・木ノ花さくや先生から、「PAYPAL」というシステムがある、という情報を教えてもらった。ネット経由で、口座番号ではなくメールアドレスに対してお金の振り込みができる。相手が口座を持っていなかった場合、取り扱い銀行からその人に対して「振り込みがありましたので、もし口座を開けば受け取れます」というメール連絡が行くわけだ。そういう感じでこのシステムのユーザーは友達の輪よろしくどんどん増えていくわけ。これはオークションや通販だけでなく、ウェッブで公開されるコンテンツ(デジタルマンガでも、音楽でも、CGでも)の課金システムとしてすごく使えそう。

・その日本でのサービスを、インターネット取引専門のイーバンク銀行が今日からいよいよスタートした。今後は相手のメアドさえわかれば勝手にお金を振り込むことができる(ただし、口座未開設の人に対しての入金はまだできないらしい)。

・面白いホームページを見つけて、感動したり応援したくなったら勝手にどんどんお金を送っちゃうことにしませんか。以前ここでもちょっと書いたお布施や投げ銭としての課金スタイル。いよいよ、デジタル吟遊詩人生活が実現するかな。

02年7月16日「視覚常時接続時代?」

・その木ノ花先生から面白いツールを頂いた。『マッハパワーSVX』(NHKジャパン)。首からかけられる形状の小型デジカメなんだけど、特筆すべきは「定間隔自動シャッター」機能。設定しておけば定期的に、自動的にシャッターを切ってくれる。これがいい。10分置きくらいに設定しておいて寝る前に見直すと自分の一日の体験が客観的にリプレイされるのだ。

・自分の見ていることを四六時中録画し、アップロードし続ける視覚常時接続時代まで、あとわずか? というのは大げさだけど何気なく見過ごしてる経験をメモするのにもすごく便利。こないだ中野ブロードウェイで2ちゃん同人ショップを見つけたんだけど、店の入り口にガチャポンまであることに、画像を見て後から気付いた。

02年7月17日「地方自治の終焉」

・長野住民の大多数が県議会を支持していないのは、みんな、イナカモノが、嫌いだからだと思う。

・あのおっさん達のやってることは実に純朴な、田舎の人の行為である。一昔前まではあれでよかったのだ。でも、いまどきイナカモノなんて県議くらいしかいない。

・今すでに情報の質も量も東京と地方に差はない。長野も、日本中のどの県も、すでに地方ではない。だから地元への利益誘導なんかに共感することもできなくなっている。そこにテレビや雑誌の中から、全日本的なリアリティーを持って落下傘降下してくる田中康夫的な存在が拍手喝采を持って迎えられる。今後、こういうことは全国的に起きると思う。

・「地域」という分類で自治体を作ることがもうナンセンスなのである。テレビ世代なら、近所に住んでる見知らぬオッサンより、お笑い芸人の方にシンパシーを感じることの方が普通なんだから。そしてネット世代なら、地球の裏側に住んでるゲーム仲間の方がお隣さんや両親よりも大切だったりする。

02年7月18日「フー? マイキー」

・東京都写真美術館ホールに『ワー! マイキー』を観に。テレビ東京とテレビ大阪でオンエアしてるショート・ドラマ『オー! マイキー』の総集編だ(8月9日まで)。
・出演者は全てマネキン人形。つまりキャラクターの演技は声だけ、画面はほとんど静止。なのにおかしい。そして、むちゃくちゃかっこいい。

・ショート・ムービーのポイントは、同じコンセプトで100本撮れる設定アイデアだ。技術的には、デザインセンスと、シナリオ特に会話のテンポ。予算や人手はその次である。パソコン上でしこしこショート・ムービー作ってる人はぜひ、このアナログなやり方に驚いてほしい。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。