第82回

02年9月3日「毎日10分、3カ月で1冊」

・例えば毎週1本読み切り小説を書く、という荒技をかれこれ10年も続けている。これが出来ている理由は才能でも努力でもない。「締切り」のおかげである。この実感は物書きの方々には同意してもらえると思う。月刊誌の連載は毎月1本書けるし、週刊誌の連載はなぜか毎週1本書けてしまうものなのだ。

・その締切りは他人ではなく自分で設定したものでも有効か。また、毎日締切りがあればちゃんと毎日1本書けるのか。確かめてみようと思い、自分のウェッブ上で毎日更新の連載をやってみた。

・書けるものですね。別に公の誌面にスペースを持たなくても、編集者に尻を叩いてもらわなくても「締切り力」は、出てくるものなのだ。それで毎日しこしこ3カ月も書いていれば1冊の本になる。

・というわけでその連載(ウェッブ上でのタイトルは『ひらきこもりのすすめ』)、単行本として出版して頂くことが決定した。ホームページを開設していろいろ書き続けている若い人に、このやり方、ぜひマネしてもらいたいです。

02年9月12日「ゾンビ犬の呪いか」

・カプコン訪問。個人的にすごく注目している『クロックタワー3』を遊ばせてもらう。プロデューサーの三並さんもちょうど上京されていて、話を聞くことが出来た。

・メジャー映画クオリティーのCGシーンはカプコン・ゲームの強みだ。今回はその演出をあの深作欣二監督が担当している。制服姿の女子高生が異国の街並みや館の中を逃げまどうホラー・アドベンチャーで、キャラクターの動作も、カメラワークも、ちゃんと深作映画のそれになっている。すごい。

・僕は『バトル・ロワイアル』の現場をずっと見学させてもらっていたのだが、深作監督の、毎日20時間ほぼ休み無く続くパワーには全くびびったものだ。そのテンションがそのままCG演出の現場にも持ち込まれたらしい。役者の動きを収録するモーション・キャプチャーの作業だけで3カ月を費やしたそうだ。三並プロデューサーもさすがに憔悴している様子。

・関係ないがカプコンの宣伝担当の萩原さんは腰が腫れて倒れてしまっていた。代わりに応対してくれた田中さんは肩の骨が外れていた。サッカーで足を折った人もいるらしい。カプコンはお払いしてもらった方がいい。

02年9月13日「いよいよ公開間近!」

・アシッド社にて、『プラトニックチェーン』CGアニメ版の打ち合わせ。元カリスマ漫画家の岡崎武士さんも今やすっかりCGアーティストになってこの現場に詰めている。

・商売っ気よりもクリエーター達の「作りたい」パワーが先行して制作されていたものだが、テレビでのOAも決まりそうで、まずはめでたしである。

・ショートムービーを地道に作り続けているような若いクリエーターの方々には、これも、ぜひマネしてほしい戦略だ。ここまでのメイキング・プロセスは忘れないうちにまとめておいて、放映が始まったら公開しようと思う。

・私事ですが、誰か渡辺浩弐が昔『バーチャルZ』という番組でアーノルド・シュワルツェネッガーにインタビューしたシーンのビデオ持ってませんか。娘が信じてくれないもので。メールの宛先は→premiere@gtvnet.co.jp

2004.11.13 |  第81回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。