第99回

02年1月12日「深作さんさようなら」

・深作監督ご逝去の報。最後まで枯れず、邦画全盛期の熱を維持しておられた方だった。70を過ぎても現場に入ると連日20時間ほぼ休み無しで声を張り上げておられた。生涯現役とはこういうことだろう。

・晩年になって『バトル・ロワイアル』でファン層を一新したことより、それに飽き足りずなんとゲーム制作に初挑戦し、その成果(『クロックタワー3』)が事実上の遺作となったことの方が驚きだ。

・生前、最後にお会いしたのは東京ゲームショウだった。立ち話の光景がカプコン社のカメラに偶然写り、それが『クロックタワー3』のメイキングビデオに収録された。僕もちょっぴりパワーを分けてもらえた気がする。

・長男の健太さんが、跡目をきっちりと引き継がれると思う。この人は古き良き映画界のことも、そして最新のデジタルメディア界のこともとても詳しい、貴重な存在である。

02年1月14日「不景気も悪くない」

・デジタルコンテンツ協会「デジタルコンテンツグランプリ」の審査会。家庭用ゲームソフトなどメジャー企業の作品と、ショートムービーなど個人の作品を、同じ目線から見られる機会である。

・審査の過程と結果についてはまだ詳しく書けないが、少しだけ感想を。こういうコンテストに出てくるものは、収益のことを考えずに新奇性に走った試作品のようなものがこれまで多かった。しかもネットコンテンツになると中途半端なものでもすぐに実稼働することができるのだ。

・しかし、今年は明らかに様相が一変していた。メジャーな作品(例えばCGを活用したテレビ番組企画など)も、新しい技術を使いながらもできるだけ低予算で、できるだけ大きな効果を上げる努力をしていることが伝わってきた。

・そういう動きによって、地に足のついたものができあがっていく。テクノロジーからエンターテインメントに飛び移ることができるのだ。

2005.03.05 |  第91回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。