第123回

03年6月29日「ネオジオ死なず!」

・木ノ花さくや先生と一緒に、『ユウ&AI』と『エンカウンター』関連情報の隠しホームページを作成。「バー・茶利庵」の常連メンバーにも手伝ってもらった。中野ブロードウェイのディープ探訪レポート企画もある。取材のために改めて歩きまわってみて、このところゲーム・ショップが急増していることに気付いた。

・ここのお店が普通の中古店と違うのは、ただ安売りするんじゃなくて、個々のソフトの歴史的価値と希少価値をきちんと査定して、それなりの値付けをしていることである。こういうスタンスなら、メーカーにとっても害にならないのではと思う。

・ちなみにファミコンソフトの買い取り価格(例)『熱血! すとりーとバスケット』\21,000、『KUNG FU』\35,000、『タッグチームプロレスリングスペシャル』\50,000等。それぞれ高値の理由を推測すると、面白い。ファミコン以外にはネオジオが人気で、『ちびまるこちゃん』店頭価格は\350,000でした。ひぇー。

03年7月1日「デジタル万引きについて」

・書店で雑誌記事をケータイのカメラで撮る行為が「万引き」呼ばわりされてる。もちろんマナーとして良くないのはわかるけど、犯罪と言い切るのは法的に無理があるんじゃないか。また、こういう流れはどうしても止めることはできない。そのうちデジカメは目玉と一体化するかもしれないのだから。

・ていうかこれを犯罪というなら立ち読みも犯罪じゃん。イヤなら本も雑誌も梱包してしまえばいい。いや、もう店頭に並べる必要すらない、全部オンライン販売すればいい……と、考えを突き詰めれば、書店の存在意義がなくなってしまう。

・特に被害が大きいとされるアルバイト情報誌や住宅情報誌は、出版社からはタダで出荷されているものだ。そもそも、タダを志向している情報なのである。本屋さんは、別の意味で危機感を持ち、打開策を考えるべきだ。

03年7月4日「生原稿流出について」

・提言は2つです。「1.生原稿をもっと大切にしよう」そして「2.生原稿をあんまり大切にするのはやめよう」いえ、冗談ではない。

1.出版社が倒産した時点でもまだアクションを起こさなかったというのは、一般社会の常識とはかけ離れている。作家さんそれぞれで危機管理能力を身につけておくべきだと思う。生原稿に商品価値が出るレベルの人なら、著作物の管理のために顧問弁護士や専任スタッフを雇うくらいのことはやっておいた方が良い。作品を大切だと思うなら、他人頼みじゃいけないのだ。

2.法体系への影響を長い目で見ると、感情的な大騒ぎに走ると、それで自分の首を絞めてしまう可能性が高い。今、紙というモノから離れて定義されようとしている著作権の価値を、またモノとしての価値に引き戻してしまうことになるからだ。盗品たる原稿を売る古書店と、盗品たるプライバシー写真を公開するマスコミ、どっちが悪いか、よく考えてほしい。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。