第145回

03年12月15日「数年後の傾向?」

・集英社の手塚賞・赤塚賞パーティー。会場内の特設ポールに受賞作をずらりと貼りだす形式は好ましい。その気になれば若い作家さん達の状況を短時間で知ることができる。マンガ業界の今後に興味がある人にとっては最高の機会……なんだけど作品見てる人は少ないんだよなあ。

・傾向としてここ数年は、キャラクター性よりもストーリーや演出に力を入れている作品が多く受賞しているように思える。そしてファンタジー色はかなり薄まっている。

・ところで元ファミマガの山森さん、元スタジオハードの高橋さん、元パンドラボックスの飯島さん、他、久々の方々に多数お会いすることができ、新しい名刺を頂いた。皆さんがんばってる。

03年12月16日「寺沢武一さん」

・寺沢武一復活! の報を聞き、長く寺沢武一作品のプロデュースをされていた伊藤淳子さんの事務所に伺った。

・寺沢武一さんが休まれていたことには事情があった。脳腫瘍を患い、実は一時かなり危険な状態にあったのだ(その事情を先日よりホームページ上で告白されている……ファンを心配させないためにこれまで一切を伏せておられたのである)。

・現在もリハビリ中らしいがコンピュータを駆使して創作を再開されたようで、一ファンとして非常に嬉しい。まず「SUPERジャンプ」誌上にて、実写とCGを合成した新作『ガンドラゴン2』を見ることができる(この前作『ガンドラゴンΣ』の主役ってインリンが演ってたんですね)。そして『コブラ~マジックドール』も再開されるそうだ。さらには映像作品の監督も手がけられるそうである。本当に楽しみだが、一方で体も大切にして欲しいと切に思う。

03年12月17日「秋本きつねさん」

・CGクリエーターの秋本きつねさん、来庵。『ムダオヤジ』他、最近の活動をまとめたDVDなど拝見。最近はフラッシュ再生用の作品もたくさん作られてるそうだ。

・ただ今ネット上でのアニメ再生にはフラッシュが事実上の標準ツールになっているせいで3Dアニメの面白みがややないがしろにされている感がある。3D環境の良い再生ツールが普及すれば、こういう人の実力はもっと発揮されるだろう。

03年12月18日「プレジャードーム」

・……と、偶然だが昨日の話の続きになる。ケー・エー・ジェイという会社を訪問したら、面白いソフトが動いていた。「プレジャードーム」という、3DのCGを生きた立体空間としてそのままネット上に公開できるシステムだ。その空間は無限にリンク拡張していくことができる。複数の作家の作品を繋いでいってテーマパークのような世界を作り上げていくことも可能らしい。

・これは経済産業省の支援を受け、来春から公開、商用化される予定である。ストリーミング映像やフラッシュアニメとは違う概念のコンテンツ群を生み出していく可能性がある。

03年12月19日「仕事納め」

・『ファミ通』の連載『プラトニックチェーン』第100話を仕上げて、今年はこれで仕事納め。このシリーズはこれで400本。原稿料って原稿量で決まるから、はっきり言って小説家にとってショートショートくらい割に合わない仕事はない。なのに書き続けている理由は、読者としてこの形式がすごく好きだからだ。

・パソコン時代になって以降、小説はどんどん長くなる傾向があるそうだ。短さの中に曲芸や手品のような面白さを追求する作家も、もっと増えるといいのに。映像についてはネット時代になって以降、一発芸的なあざやかさを狙ったものに秀作が増えている。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。