第146回

04年1月1日「明るすぎましておめでたくない」

・僕の今年のテーマは「白昼模索」です。インターネットは暗黒ではなく、真白なのだとは思いませんか。世界の陰部にまで、あかあかと光を当ててしまう。あんまり明るすぎて、見えなくなる。行き先が、わからなくなってしまう。

04年1月5日「殻を破れるか!?」

・年末年始、プレステ2『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』(3月4日発売予定)のサンプルをプレイしていた。公安9課の草薙素子とバトー2体のキャラを使い分けて様々なミッションをクリアしていく形式で、主に撃ちまくり、時に格闘操作はボタンのほとんどを使用する複雑なもの。アニメと同時に話題を盛り上げていく形式のリリースだから一般ピープル向けのヌルいゲームかと思ったら、予想外にタフで、驚いた。欧米マーケットを狙ったゲームデザインかもしれない。

・ただし、慣れてくるとどんどん面白くなっていく。特にカンフーアクションを360度回転させながら見せる手法がキモチいいのだ。これはもちろん『マトリックス』のパクリだが、そもそも『マトリックス』が『攻殻』のパクリなのである。

・さて日本のアニメやマンガはずっとハリウッドにパクられ続けてきたが、今後は堂々と存在感を主張するべきだと思う。最近、ハリウッドの映画プロデューサーが大挙して日本に押し寄せ、過去の名作マンガやアニメの映画化権を買いまくってるという話は事実。しかしその実体は、ちょっと妙なのだ。オタク世代の監督が日本のアニメを丸パクリした設定やシークエンスを作ってしまった。それが著作権的にマズいレベルだった。と、いうことが取り返しのつかない段階で判明したとする。と、プロデューサーはあわてて日本にやって来て、ユーの作品をハリウッドで映画化したい、と言って権利を買うのである。もちろん映画化の気など、さらさらない。ただ最低限のお金で権利を押さえれば、制作中の作品を盗作として告訴されることを止められるわけである。

04年1月6日「街頭メディア」

・雑誌『ビッグイシュー』が立ち上がっている。内容はまだイギリス版の翻訳記事がほとんどで今後に期待というところだが「ホームレスの人達が街頭で売る」というシステムを構築したところまでだけでもかなりの成功だと思う。

・マナーとモラルのあるホームレスを全国で組織できたら、これは新しい流通網になる、だけでなく、新しい情報網になるはずだ。次段階には、この独自のインフラを記事に反映させてほしいのである。例えば全員にカメラ付き携帯電話を配って情報を集めたりできたら面白いのにと思う。

・ところでお正月、神社の屋台のテキ屋さんに「一日どれくらい稼げるの」とまじで聞いてみたら、「10万から100万の間」と答えた。そういえば就職しないで大道芸人やって月50万稼いでいる友達がいた。いろいろ大変なことはあるみたいだけど、ストリート系商売の利益率は高いのだ(そういえば僕も20代の頃、週1日だけ針金細工売って生活してたことがあった……コツは『怒られたらすぐ逃げろ』だ)。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。