第148回

04年1月20日「ひきこもり殺人鬼」

・『テキサス・チェーンソー』試写。50年代アメリカに実在した殺人鬼”テキサス・チェーンソー”を題材にしたものとしては『悪魔のいけにえ』(’74)という傑作というか極悪映画がある。これに打ちのめされてホラーマニアになってしまった人はとても多いと思う。そう言えば泉谷しげるさんもベストワンに挙げていたなあ。これはそのリメイク作品だけど、ラストの爽快感と後味の良さがオリジナルとはかなり違い、一般の方々にもお薦めできる。デートで見ても良いレベルだ。

・そして今なら「”テキサス・チェーンソー”はひきこもりだった」という解釈で観ることもできる。殺人マニアになってしまったハンディキャップの少年を家族のみならず地域住民全体でかくまっている。そんな町に、よそ者の、それも脳天気で失礼な若者達が乱入してくると……という展開なのである。

04年1月21日「目だって手だって2つあるし」

・任天堂が新ハード「ニンテンドー・ディーエス(仮称)」の情報をリリース。画面が2つ付いてる携帯ゲーム機で、今年末発売予定。任天堂のことだから2画面だからこそ生きてくるゲームのイメージを具体的にいくつか形にしてから、ハードウェア開発に進んでいるはずである。

・GBAは圧倒的に売れ続けているがゲームキューブがふるわない任天堂がここ数年非常に熱心に研究していたのは、GBAとゲームキューブを接続して、2画面を生かしてのゲームだった。その現場で、素晴らしいアイデアが生まれたのではと期待する。ゲームキューブと心中させるには惜しすぎるようなアイデアが。

04年1月23日「妄想は街のエネルギー」

・『千年女優』『東京ゴッドファーザーズ』の2作品がアカデミー賞にノミネートされている今敏監督のTVシリーズ『妄想代理人』(2/2~ WOWOWでOA)試写。

・金属バットを持ちローラーブレードで疾走する通り魔少年、通称”少年バット”のウワサが都市の中で様々な人々の妄想を産みつつ連鎖増殖していく。『東京ゴッドファーザーズ』で完成させた、現在日本の街や人をリアルに美しく捉えていくノウハウを生かした作品。そしてものすごくかっこいいシーンを並べていって、それできちんとストーリーを成立させていくところが見事。美しいパズルが組み上がっていく様に魅せられる。

・話変わるがロッテから『シングルビーンズチョコレート』(カカオ産地限定のシリーズ)の試供品が送られてきた。別に誉める義理はないんだけどコレすごくおいしい。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。