第194回

12月20日「ナムコ入り」

・中野ブロードウェイ・ビルの東側の一角だけが唐突にカラフルになってしまった。ナムコの巨大ゲーセン「プラボ」がオープンしたのだ。これでお外に出ることなく、最新ゲームもオッケーである。

・ナムコのブランドイメージがこの場所の雰囲気にそぐわないのか、今のところまだ店内はがらがらである。まぁ世界一ゲーマー人口密度の高い場所なのだから、今後の営業努力で客は増加していくでしょう。ていうか簡単な方法が一つある。

メ イ ド さ ん を 置 け !

12月21日「パッケージでもネットでも」

・『晴れときどき女子高生/プラトニックチェーン』売れ行き快調、とのこと。今日は集英社のウェッブ制作チームとミーティング。

・プラトニックチェーンは小説もマンガもアニメもいろいろな作家さんと組んでいろいろなタイトルをどんどん出していくつもりだ。どの一本から見て頂いても(例えばシリーズ単行本の続編から読んでも)OKなようにしているが、早く乗車してくれた人ほど、いろいろと面白い仕掛けに気づいて頂けると思う。そのたびに、もう一度ページを開いて欲しいと思う(つまり読み終わっても売らないでね、ということ)。

・ネット上には、そういう仕掛けについて、読者に情報を提供するための場を用意しましょうかという提案があった。自分の作品について自分で説明することはとても難しい(説明するようなことがあるなら作品の中でやればいいのである)が、こういうスタイルなら、何かできそうな気がする。

12月22日「ケータイも結構すごいよ」

・某携帯電話情報誌から、最近続々と移植されているレトロゲームの特集企画が持ち込まれる。編集部で用意したゲームをその場でプレイしつつコメントしてほしい、という依頼だった。それが、インタビューやってると間に合わないからこっちで原稿書いておいてほしいという話に急転した。

・こういう状況は修行のつもりでこなすべきだと僕は思ってるので、様々なケータイゲームをしゅくしゅくとダウンロードしてはしゅくしゅくとプレイし続けている。

・80年代中盤までのゲームは、家庭用もゲーセン用も、最近の機種向けならほぼ完璧な移植が実現している。ゲーセンものでは『ディグダグ』や『ゼビウス』などナムコの第一期黄金時代のタイトル、ファミコンものでは『バイナリィランド』『ボンバーマン』などハドソンの初期カルトゲームが良い。

・どうもエミュレーターで動かしているらしきゲームもある。すれば、今後の移植はとても簡単なわけで、タイトルはますます充実していくだろう。古いゲームについての情報も必要になっていくはずだ。

・フツーの人ならケータイ一個あればもうゲーム機なんかいらないって時代も、すぐそこに来てるかもしれない。としたらNDS対PSPは、最終戦争になるってことだ。

12月31日「年越しゲームはこれ」

・編集者の某さんの指令もあり、インディーズの美少女ホラー・ゲーム『ひぐらしのなく頃に』をじっくり攻略中。シリーズ最新作『ひぐらしのなく頃に解』は冬コミ最大の話題作で、1日で*万本売ったという噂もある。僕はもうゲーム評論はほとんどやっていないけれども、このタイトルが業界に与える(であろう)インパクトに、当分は注目していたいと思っている(そういえば文章の力で勝負できるゲームジャンル「ノベル系美少女アドベンチャー」が新しい才能の受け皿になっている、という話を以前、書いた)。

・最近の美少女ゲームは選択肢がどんどん少なくなっているが、これは選択肢が皆無。その点について、作り手側からは「あなたは各シナリオごとに、物語中に残された謎を心ゆくまで吟味することができます。あなたはその謎を吟味するために、電車の中での退屈な時間を推理に費やしたり、本作品を楽しんだ仲間たちと論議を楽しんだり、ネット上で独自見解を発表するサイトを探してみたり、あるいは当サークルのHPで発表して反論を得たりして遊ぶことができます」と、コメントされている。

・ただひたすら手を動かして選択肢をしらみつぶしにするのではなく、自分の脳で考えろ、ということなのだろう。その狙い通り、今、ネット上にはこれについての解釈や論議が非常に盛んに行われている。作者はただものではない、と思う。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。