第195回

1月1日「あけましておめでとうございます。」

・年が改まりましたが、心機一転などせずに、昨日の続きの今日をだらだらと生き続けます。豊かな不景気はまだまだ続くようです。若い人は、10年くらいぶらぶらするのが普通だってくらいの考え方で開き直った方がいいと思います。僕としましては若者と老人の曖昧な境界地点から面白いものがいろいろ見えるので、それらを観察して考察して書いていくつもりです。よろしくお願いします。

・いつものように中野の街をひとり散策していると……あ、リラックマ発見=写真。

1月2日「ショートショート」

・『ファウスト』誌向けのショートショート小説に取りかかる。アイデアストックをばさばさ調べ3本を掘り出す。冷蔵庫の中を見て具材を探す料理人の気分である(あ、今「ぐざい」という言葉を入力したらひん曲がった鼻の絵が出てきましたよ……「ξ」)。

・関連の情報を、いったん脳に入力。以降は執筆から推敲、校正までのプロセスを頭の中だけで完遂してしまう。僕のショートショートの文字数は10年前から固定していて、脳内に原稿用紙が完成しているわけだ。この上でなら目を閉じるだけで原稿を書けるし、書きかけでおいといても大丈夫。

・この後2、3日過ごしているうちに頭の中で原稿が書き上がっていくので、完成したら暇な時にそれをケータイ入力する。そういうやり方。

1月3日「マンガ原作」

・脳の深層ではこびとさん達がショートショートを一生懸命書いてくれているが、そろそろ『Gファンタジー』連載のマンガ原作に取りかかる。

・この1ヶ月、思いつくたびにケータイに入力しておいたこまぎれのシナリオを、シーンごとにカードにしてパソコン上にだっと表示。それを順番に並べ、繋いでく。ただし同じ時間軸上に複数のシーンがあったりもするので、カードは枝分かれ式のアドベンチャーゲームになっていく。

・このゲームをいろいろに遊んでみる。そして最終的にはその中から一つの路線を決めて、一本筋のシナリオに落としていくわけである。

1月4日「レビュー」

・『ひぐらしのなく頃に』は目明かし編に進む前にふと思いつき、足踏みしてみることにした。頭を整理しつつ、もいっぺんこれまでのものを読み返しつつ、いろいろと書き物をしてみる。

・ゲーム評論の仕事は今はほとんど受けていないが、感動したゲームについては熱くなっているうちに長大な文章を勝手に書いている。もし依頼があればそれを媒体別に切り分けていくという方法を取っている。今日は『BURRN!』誌用にレビューを一本、まとめた。

1月5日「長編」

・そろそろまた長編小説に取りかからなくてはならない。でも長編は気持がノらない時は絶対書けない。ちょっとでも眠いとかつらいとか感じたら、やめる。でもその代わり、のった時は他のどんなことも犠牲にして書くべきなのだと思う。

・僕の場合、電車の中で思いついて書き始めそのまま環状線を何十周も乗り続けたことがある。フロ上がりにパンツ一枚で何気なく書き始めて我に返ったら翌々日の昼だったことも。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。