第196回

1月6日「インタビュー」

・『ゲームラボ』誌に連載している「三才のハローワーク」のための取材。今回はインターネットレディーに会う。ライブカメラが仕掛けられた部屋に住み、私生活を24時間覗き見させることでお金を稼いでる人。それも最も長期間にわたってアクセス数ナンバーワンを維持し続けたカリスマギャルらしい。

・そういう仕事をやっていると、「日常の行為」と「見られていることを意識した演技」が混濁して、精神的に壊れていく過程が必ずあるという。本人だけではなく、部屋に遊びにくる彼氏や友達も一緒にじわじわと壊れていくらしい。

・匿名を条件に受けてもらっている取材なのでインタビューは録音なし、メモなし。でもその後事務所に戻って、話の中から心に残った部分をつらつらと書き出すと、それで原稿が仕上がってしまった。ネットの周囲には小説よりも面白い現実がたくさんある(ただしそういう現象に、あくまでも小説家として向き合いたいとも思っている)。

1月8日「早くも今年のベストワン決定かも」

・手が大きくなるほどゲームをやっている。『ひぐらしのなく頃に』は目明かし編まで読了。非常に美しく謎の解明が行われていて、その鮮やかさには戦慄させられるほどである。あれはああいうことでこうなってそうなってたわけですね。作者の頭の中には、この実に巨大にして複雑怪奇な物語世界が最初から矛盾なく緻密に完成していたのだろう。

・このゲームについて語り出せばきりがないが、同時に、このゲームに評論家として関わることへのためらいも感じる。作品そのものはもちろんだけど、その商品としての戦略も、正しいと思えるからだ。体験版をあれだけ公開し、論議をあれほど挑発している以上、そこに評論家が出しゃばっていく必要はないのではとも思えるのである。

1月13日「竜騎士07さんに会ったよ」

・てな感じで各所で騒いでいたら、その『ひぐらし』作者の竜騎士07氏と話をする機会に恵まれた。

・竜騎士07さんはとても爽やかで穏やかな人で、話もうまく、引き込まれる。そして笑顔のままその目が青く光る瞬間もあり、はっとさせられる。この人には嘘はつけないなあ、と思う。

・この会合、ちょい秘密のプロジェクト絡みゆえ、詳細はまた。さらに竜騎士07さんは覆面作家なので、写真はお会いした場所の窓からの風景。富士山も、中野ブロードウェイ(右端)も見えるぞ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。