第217回

6月3日「飲料メーカーに金もらったわけではないが」

・前回、炭酸飲料は一缶の中にシュガースティック12.5袋ぶんの砂糖が入っている。こわー炭酸飲料。というところで終わったが、そこで思考停止している自分にふと気付いた。この、山盛りの砂糖はいったいぜんたい体に悪いのかということを検証しなくてはならないんだった。

・調べてみると、砂糖のカロリーは1グラム4キロカロリー。そんなに低いのか。ごはんとかそばと変わらない。シュガースティック12.5袋ぶんでも、152キロカロリー。ていうと小さなおにぎり一個ぶんくらいである。

・問題の炭酸飲料を10本飲みまくっても一日の必要カロリー(大人の男性で2100キロカロリー)に及ばない。とすると「甘いものは、太りやすい」っていう常識(?)はウソではないか。

・さらに調べる。「砂糖は、直接的に糖尿のもとになる」というのも間違いかもしれない。血糖値を上げる効果は、パンやニンジンの方が高い。ではなぜ、医者も栄養士も砂糖の摂りすぎばかりを責めたてるのか。なぜ、甘すぎるものは体に悪いとされるのか。塩分のきついみそ汁や梅干しやめざしなどの方がずっと不健康なのではないか。
追記*「『砂糖は太る』の誤解」(高田明和/講談社ブルーバックス)という本をめっけた。上記の疑問に対する答えは、ここにかなり詳しい。甘いものは虫歯のもと、という定説も誤解のようである。ていうか僕はこれからも缶コーヒーとコーラでがんがん栄養摂るからね。

6月4日「焼き畑農業の跡地」

・ゲームの本質的な価値について。読売新聞や朝日新聞にコメントを載せていただいた。その効果でいろいろなところから質問の電話。これは流さずに、本気で対応していくべきなのだろう。まず、関連資料や未発表原稿を整理しておくことにした。

・問題が今噴出してきたのは、かつて儲かったお金を調子に乗ってみんな懐に入れてしまった人達のせいもあるとつくづく思う。計画的に育てながら収穫しないものだから、後はもう焼け野原ばっか。それは全部あんた達のものじゃなかった。勝手に使ってはいけないお金だったんだよ。あー。

6月5日「CMスキップ機能反対」

・ゲーム史についての資料整理。昔テレビから録画したビデオテープを大量に見直している。20年以上前のテープもある。当時ムダと思っていた映像が、すごく貴重で役に立つものになってたりする。映画を録画するつもりで時間がずれて録れてしまってたニュース番組とか。映画なんか今ならDVDで手に入るわけで、録画しとく必要はなかったのだ。

・それから、番組よりCMの方が今見るとすごく面白い。最近HD録画でCMスキップしてる人が多いらしいけど、一緒に録っといた方が絶対いいよ。保存用の映像をDVDに落とす時も、アタマとオシリをきっちり決めずに、できるだけ無駄な映像も入れとくといいと思う。

6月6日「梅雨のひきこもり方」

・飼ってるアゲハが羽化直前のため全く外出できないこともあり、ひきこもって資料整理を続けている。その過程で全然別のひらめきがあり、『1979年のゲーム・キッズ』という小説を書きはじめた。次号の『メフィスト』に寄せようと思う。

・タイトーの『スペースインベーダー』がヒットした1978年ではなく、任天堂が『スペースフィーバー』を、セガが『スペースアタック』を出していたような時期。ゲーム業界にそんなまがまがしさのあった時代のことだ。

・当時あなたが場末の喫茶店や不良少年のたむろするインベーダーハウスで遊んでいたのは、もしかしたらタイトー製のスペースインベーダーではなかったかもしれない。そこではインベーダーが下限なくどこまでも降りてこなかったか。名古屋撃ちをしようとすると音のタイミングがズレてしまって慌てなかったか。

・そういうゲーム画面そういう空間そういう時代については、各メーカーの社史からだけでなく、プレイヤーの頭の中からも消え去ろうとしている。それをなんとかありありと思い出して書いてみようとしている。ただしタイトルも、そして内容もやや痛々しすぎるので、単行本に入れる時には変えてしまうと思う。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。