第231回

9月20日「16連射20周年」

・元ハドソンの梶野さん来社。円満退社して、今は映画を監督したり表紙が話題のA系フリーペーパー(=写真)を編集したりしているそうだ。

・最近また「高橋名人」人気が爆発している話など(この人、’80年代は高橋名人のマネージャー? をやってたのだ)。SNSのmixiを通じて今は、高橋名人個人とファンがマスメディアを通さず直接繋がっている状況が面白い。高橋さんがマイミクつまり友人として直接リンクしている相手だけでも1000人に達している。日に何度も更新される名人の日記の読者はマイナー雑誌の部数を凌駕しているらしい。こういうところから、二度目の、そして今度は成熟した視点からの名人ブームが起こらないかなあ。’80年代のジャイアント馬場ブームみたいな。

・そんな高橋名人は10/14NHKポップジャムに出て『スターソルジャーのテーマ』を歌うと! マジっすか!?

9月21日「アサハラ箱男説」

・『CUBE ZERO』。四角い密室“CUBE”が繋がりあった奇妙な建物の中を、部屋それぞれに仕掛けられた殺人トラップをクリアしつつ逃れようとするSFスリラーの、第3弾。設定イコール物語、というこのスタイルは非常にスタイリッシュなフォーマットであり、ミニマムにして無限なストーリーに成り得るものだ。今回はシリーズ序章として、CUBEが造られた理由を明かす。

・記憶喪失の人々がその中で目覚める、という始まり方からこのCUBE空間は脳のメタファーとして機能する。また今回は中の人々を観察している運営側のマッドな思想を明かすことにより、妄想空間の脳を実体化したものとしてのCUBEのイメージが強調されていた。

・今のアサハラは逆に、脳という世界の中に閉じこもっているわけだ。そこは楽園なのである。

9月30日「国家スパイ→犯罪者」

・『ダイヤモンド・イン・パラダイス』試写。007シリーズのピアース・ブロスナンが、今度は世紀の大泥棒を演じる。ダイヤモンド、地上の楽園ハバナの豪華ホテル、カジノ、ビキニ美女、豪華客船……と、ものすごくスノッブなアイテムで全編満たされている。そして最新ハイテクツールがユーモラスに活用される。つまり、これって結局ほぼ007ですね。

・主人公の設定を真逆にした気持ちはよくわかる。冷戦終了後、007シリーズ等は毎回「敵」の設定に苦心惨憺しているわけだ(これは価値観が多様化した現代の世界で「敵」の設定に四苦八苦しているアメリカ政府の状況と同じこと)。その点、ドロボーはシンプル。しかもルパンのように金儲けではなく「美学」を旨とするスタイルならもっとラク、というわけである。

・ただし結局ダイヤモンドだってどうでもいいや、という話になっちまうところがアニメっぽくていい。ところでルパン三世のハリウッド映画化ってどうなったんだろう。

2006.02.23 |  第231回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。