第246回

1月24日「日本から発信!」

・川崎の撮影スタジオに。密かにお手伝いしている映画『BRIDGE(仮)』がクランクインしたのである。2025年の日本を舞台としたSF作品。『マトリックス』のVFXでアカデミー賞を獲ったジョン・ゲイター氏を監督に起用し、世界マーケットを視野に入れた企画である。プロデュース・システムはハリウッドスタイルに近いが、撮影から編集までほとんどのプロセスを日本国内で行なっている。

・ゲイター氏は最先端の映像について、その中身についても、見られ方についても、凄くわかってる人だ。アイデアも手法も、近くで見てるだけで刺激されまくりである(時期が来たらメイキングを含め詳細を現場レポートします)。

・フルデジタルの映画作りには、クオリティーを上げるために手間とお金を存分に注ぎ込むべきところがある。しかし、逆に思い切り効率化できるところもある。この機会にそういうことも勉強しなければと思っている。

1月25日「アンドロイドは電気鶏の夢を見るか?」

・ドワンゴ社に。密かにお手伝いしている携帯メールサービス「ニワンゴwww.niwango.co.jp」についての打ち合わせ。立ち上がりは非常に好調らしい。今後は自己増殖的にコンテンツ量を増やしていくこと、つまりユーザーからのありとあらゆる語りかけに柔軟に対応していくためのデータベースやリンク構造を作る、いや作り続けることが大切だろう。ユーザー側から見れば、アクセスすればするほど賢くなっていく人工知能のようなものになるはずだ。

・ロボットが人間と一緒に暮らしていくうちに、だんだんと人間に近付いていく、そんな様子をケータイで体感することができるわけだ。

1月26日「押井監督のマッドムービー?」

・押井守監督作品『立喰師列伝』試写。写真撮影した、つまり二次元静止画像の人間をデジタル処理で動かしつつ、膨大な量の語り(by山寺宏一)によって強引に話を展開していく。『ミニパト』のあの手法を実写で、というわけだ。映像の狂い方としてはモンティ・パイソンを思い出す。いや、むしろ昨今ネット上で見かける一発芸的フラッシュムービーに近い感覚のものかも。

・実験映画だが、そういう意味で将来性も感じるのだ。スチールカメラとパソコンで作る映画の新ジャンルを創出するきっかけとなるかもしれない。このパターンは配信用コンテンツに向いているし、クリックに対応する見せ方もありだろう。

・さて「立喰師」とは、ソバ屋や牛丼屋などでの作法についてこだわり、出されたものについて蘊蓄を語り、そして難癖をつけ、結局ただ食いしてしまうことに血道を上げる人々のことだ。落語の「時そば」の雰囲気を狙うパターンだと思う。人が立ち食いする場所やそこで行われる会話には、時代の雰囲気がありありと現れる。それで「昭和」の街頭を活写する、という狙いのようだ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。