第256回

4月2日「神楽坂徘徊情報」

・桜満開。神楽坂の「和カフェ」ブームについては以前書いたが、今日は赤城神社境内にある「赤城亭」に。古いお屋敷を最小限の改造によって料亭風に仕上げたコンセプチャルな空間。ここの店主の大里さんは、ファミコンブームの立て役者の一人として業界で有名な方である(「16連射」とか「ファミコン名人」という言葉を発明したのはこの人)。ある日、この境内で久しぶりにばったり会って驚いたものだ。

・もちろんゲーム・プロデュースは今でも続けておられるが、最近は神楽坂という大変に美しく歴史もある街を活性化しようとするボランティア・プロジェクトにも関わっておられるらしい。このお店はその一環のようだ。

・業界での経験値を生かしてのビジネスとしては、メイドカフェもいいけどこういうのもいいなあ。そういえばここで「ゲーム業界の方もよくおみえになりますよ」と声をかけられたことがある。「スキンヘッドの、ファミコンのお上手な方もいらっしゃいました」と。もしかして!

4月6日「Xbox360はどうなる」

・Xbox360のメディア向け発表会。『ナインティナイン・ナイツ』『ブルードラゴン』など、注目作を一挙ショウイング。

・今後はダウンロード用コンテンツの拡充にも力を入れていくということ。ハイビジョン映像ソフトの配信も始めるようで、それに対応して、例えばアニメとゲームを同時に展開するプロジェクトなどがいろいろとスタートするらしい。もちろん最初に本格的に始めるのはバンダイ(改め、バンダイナムコゲームス)。この場では、『ゼーガペイン』というロボットものの新作が発表された。

・また、黎明期のアーケードゲームの配信サービスも始まる。これが任天堂レボリューションのレゲー配信戦略と違うのは、XboxLiveのシステムを活用して、配信と同時にそのゲームを使った全世界大会を開催したりするところ。例えばかつて『パックマン』を極めた往年のゲーセン野郎は、久々にここでやってみたらいきなり世界から注目されること請け合いである。

・ダウンロードサービスのために「マイクロソフトポイント」といういわばバーチャルマネーを使わせるというのも面白い。マイクロソフトの強みは全世界同時に戦略を進められることである。仮想貨幣が機能しはじめその価値が世界のゲーマー共通の価値概念を形作ったら、そこに仮想国家が出現することになる。

・さてこの場は、Xbox事業本部長に新しく着任した泉水氏の決意表明の機会でもあった。理系の、誠実そうな人である。Xboxの時は、代理店をはじめこのビジネスの周囲に群がってきていた人々の誠意の無さに正直あきれ果てたが、マイクロソフトとしてはスタッフを一新することによって、取り巻きも一新することに成功しただろうか。ハードも良い。ブランドも良い。ソフトも良い。きちんとやっていれさえすれば少なくとも10%は取れるマーケットだと思う。がんばって下さい。

4月7日「まんとら(追加)」

・『まんとら』(TVK)はもう1回(14日深夜)出るから見て下さいね。この番組、放映後24時間ネット配信もしてるそうだ。世界中どこからでも見られるってわけだ。偉いぞTVK。

・今後、テレビでほんの触りだけ流しておいて、本編はそれ以降に配信する、というビジネスモデルがあり得ると思う(この話、長くなるのでまた)。

・さて今週OA分では、実際に投稿されてきた作品にいろいろとコメントさせて頂いた。こういう機会について責任の重大さはわかっているつもりなので緊張しつつ拝見し、作品によっては添削作業をした上で喋った。が、そのせいでちょっと硬い話になってしまったかも。ばっさりカットされてるかも。

・本当は細かいアドバイス作業については、ネットの方を使えばよかったのである。(「まんとら」はサイトの運営にも力を入れている)。放送と通信のコラボはこういう形から始めるべきなのである。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。