第262回

5月17日「あッ」

・日本で一番売れる翻訳小説が、今、美しい言葉をいっこ殺しましたよ。

5月23日「5年もの」

・「どうぶつの森ミュージアム」@原宿LAPNET SHIP。『どうぶつの森』をテーマにした若手アーティスト作品の展示会+スペシャルアイテム配布。このゲームにハマってる「大人」の気分をよく映し出してるイベントだ(6月4日まで/入場無料・ただし整理券が必要)。

・未体験の人に薦める時は「友達や恋人と夢の中で待ち合わせできたら楽しいでしょう?」と言おう。このゲームは、ニンテンドウ64でデビューした当初(2001年4月)から既に、ネットワークの可能性を内包していたのだ。

・一本のタイトルを、ハードの変遷をまたぎ5年かけて本来の計画通りの形に普及させる。1年単位の決算にあたふたしている企業にはマネのできない戦略である。ハードウェアの勝負が一段落ついた時、ソフトウェアの勝負になる。社内にプロデューサー・ディレクターを育て、自前のタイトルをきちんきちんと出し続けてきた任天堂の底力は半端ではない。

5月25日「20年もの」

・『ニュー・スーパーマリオブラザーズ』買いに行ったらDSライトも並んでいて普通に買えた(新宿ヨドバシ)。大量出荷があったらしい。調べてみるとやはりアマゾンでも買える。任天堂がどのタイミングでハードを潤沢供給するかということに興味があった。マザー3でもテトリスDSでもなく、やはりニューマリオだった。これまであえて抑え気味にしていたDSブームにこのあたりから火を点けるという目論見だろうか。

・さてニューマリオ。日本人なら米を食え、と言い放つくらいの乱暴さでこのゲームを薦めたい。2Dゲームとしての本質的な魅力をきちんと抑えた上で、ある部分は極端なまでに過激過剰にしている(例・巨大マリオ)。ファンが大切に思っているタイトルについて、変な方向に走らせずにちゃんと正統な進化を遂げさせる。それが、システムホルダーに求められる責任なのである。任天堂ブランドの信頼性はそこにあるわけだ。

・ただし、DSブームがそのままWiiブームに繋がるというわけではないだろう。似ているようで、快楽構造は全く違うものだからだ。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。