第327回

9月11日「時をかけるおっさん」

・『バタフライ・エフェクト2』。過去に戻り運命の分岐点でスイッチを入れかえるというサウンドノベル的アイデア。アメリカではヒット作の続編でもオクラ入りしてしまうことがよくあるが、この作品はDVDスルーで救済リリースされたものが再評価されていた。そして日本での劇場公開が実現したわけだ。

・主人公の男は、恋人や友達とピクニックに行った帰りに交通事故に遭い一人だけ生き残る。そして1年後……という展開。前作では過去にスリップするためのアイテムは日記だった。今回、登場人物はカメラを持ち歩いて日常を撮りまくっている。そして写真を凝視することにより、その時空に戻るのである。

・記録と記憶が混乱する描写は、ケータイを持ち歩いて撮りまくっている人にはとてもリアルに感じられるだろう。この作品、今の日本の若者にかなりハマるんじゃないだろうか。主人公がケータイからデータベースを使いこなすシステムの開発に携わっているという設定もあり、制作者はかなりしっかり狙っていると考えられる。デジカメの写真は日時が記録される。そしていつまでも色あせない。今、過去の愛や死との向き合い方はとてもヘビーなものになっているのだ。

・ところで最近、東京の空がすごく綺麗ですね。パシャリ。

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9月12日「ボクサーズロード」

・講談社にて、「講談社BOX」イベントの打ち合わせ。阿部真大さん、佐藤友哉さん、清涼院流水さんと、おなじみ太田編集長。滝本竜彦さんは引きこもり中で欠席。このメンバーでトークセッションするのである。みんなお喋りも面白いので、僕はでしゃばらないようにしよう。

・当日、講談社BOXの来年以降の予定について未発表情報をがんがん出すことになりそう。僕もお手伝いしているある極秘プロジェクトについて、その場で言ってしまおうということになった。言っちゃっていいんだろか。

9月13日「セカンドライフはありだと思う」

・「セカンドライフ」の実体をいろいろと勉強させてもらいに大手広告代理店に。セカンドライフはそれ自体の集客力より今は他メディアへのパブリシティ波及効果の方が大きい。マスコミに誘導されて一度入ってみて、ふらふら歩いてみただけで「こりゃだめだ」と見捨ててしまう人がとても多い。代理店の立場としては、ビギナー特に女性を優しく導く仕掛けをいろいろ考えているということ。なるほど。

・ただしユーザーとしてはここに、テレビやゲームのような手厚いサービスを期待して行くのは違うような気がする。面白いことは自分で作る、そういう場所なのである。

・だから今の状況が面白いか面白くないかとか、盛り上がってるのか終わっているのかとか、そういうことは別にどうでもいいと僕は思っている。肝心なのは、このシステムをツールとして利用するアイデアだ。それを持ってる人はすぐに使うべきだ。それが魅力的なら、それに惹かれた人はそのためだけにでもセカンドライフを初体験してくれるはずだ。そして、他の場所に行かなくったって、別にいい。

・技術的に障壁となっていると思える部分もいくつかあったのだけど、それらは全て近い将来に解決されそうだという情報があった。クリエーターの立場でなら、時間的労力的リスクを投じてがんばってみる価値はあると思うよ。

2007.09.15 |  第321回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。