第333回

10月17日「スポーツ雑感」

・反則負け上等の試合運びも、殺人と紙一重のしごきも、梶原一騎的な世界観においては許容されていたものだったのだ。70年代にはね。

・スポ根ものドラマに大衆はもう、乗らなくなった。戦陣いや千尋の谷に突き落としたらそりゃ虐待だしそもそもそんなことをするライオンはいない。よくよく考えると「健全な肉体に健全な精神が宿る」わけがないのである。体鍛えてますなんて言ったら、お笑い芸人目指しているの? と聞かれてしまう時代。プロスポーツはその点で難しい局面にあるわけだ。ギャンブル解禁しかないのか!?

・ボクシングや相撲だけではない。例えばプロ野球は今後は、高校野球を支えていたスポ根の美学が崩壊することを前提にしていかないと立ち行かなくなるだろう。代わりに、合理主義こそ正しいとするメジャーの価値観に基づいていくべきなのである。

・さて、梶原一騎氏は実は父と子の決別もきちんと書いていた。精神主義と合理主義の対立も。当時はその部分は流されていたんだけど、今読み直してみると示唆に富んでいる。

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10月18日「ヨガはケータイに向いていた」

・というわけでヨガを始めてみた。もちろんDSで。『DSではじめるティップネスのヨガ』(スクウェア-エニックス)。女性向けのようだけど、これ、かなり使えそう。ジムに通う方法と違って短い時間でちびちび無理なく続けられる。仕事や勉強に行き詰まった時、DS持って公園の芝生の上なんかでちょっとやってみたりすると気持ち良いかも。

・5年後のケータイ電話向けコンテンツをささえるのは今ゲーム界で作られているこういうソフトなのだと思う。

10月21日「星新一が一新星だった頃」

・NHKのETV特集『21世紀を夢見た日々~日本SFの50年~』見る。我が国のSF文学黎明期のリポートだ。

・SF作家クラブ発足当時の、星新一氏、筒井康隆氏、小松左京氏ら、いわゆる第1世代の様子を貴重な映像・音声資料で。ただ群れて酒飲んでピザ食べてたばかりではなく、みんなで原子力施設や慶応大学のコンピュータルームを見学したりしていたのである。

・当時、SFはあくまでも子供向けの、かつフリーキーなジャンルとして差別されているものだった。にも関わらず彼らは貪欲に闊達に活動した。鉄腕アトムやエイトマンなど創世記のアニメ、あるいは怪獣映画、そして1970年の大阪万博など、SF作家が大きな役割を果たしたムーブメントについても言及。ビジュアルイメージの豊潤さがたたえられる現在日本のポップ・カルチャーだが、その土台は小説家のイマジネーションが築いていたのである。

・と、そんな今日タイミングよく星新一トリビュートのアンソロジーにお誘いを頂いた。書きます書きます。そういえば今年は星さんの没後10年なのでしたね。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。