第334回

10月26日「書を求めよ、町へ出よう」

・読書週間だね。おなじみ太田さんや柴山さんと中央線沿線ブックカフェをめぐる。もちろんみんな決して暇ではないのだが、こういうことが大事なのである。

・個人経営の書店や喫茶店がバブル期に激減した(家賃が上がって立ち行かなくなったり、持ち物件でやってるところも相続に失敗したり)。跡地の多くはチェーンのビデオレンタルショップやファーストフード店になってしまった。しかし00年代に入って個性豊かなブックカフェのブームが始まった。自分の情熱を仕事にできないかと考える若い世代の、創作の一形態としてカフェという形体が現れたわけだ。欧米のギャラリー文化に近いものかもしれない。おかげで、また街歩きが楽しくなった。

・三鷹の「フォスフォレッセンス」など、超個性的なお店がちゃんと続いているのは嬉しい。本が好きで、とか、コーヒーが好きで、といった趣味の延長で始めたばあい、その経営は偏執狂的な拘りに支えられるべきものである。そういうことはネットで伝わりやすく、同好の人々を吸引しやすいのだ。

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10月30日「目からウロコ」

・コンタクトレンズを使い始めたのだが、どのレンズを買うべきかわかっていても買うたびいちいち病院で診断してもらわなくてはならない。こりゃわかりやすい保護政策だ。こんなことをいつまでも続けていたらみんな国内で買わずに海外の業者からネットで買うようになるんじゃないかなあ。

・というわけで僕も調べていたら、興味深い事実に気づいた。今使ってるのは1週間連続装用のものなのだけれど、アメリカのサイトで調べると、あっちでは「1ヶ月連続装用」として売られているのである。同じメーカーの、全く同じ商品である。日本の業者はつまり4倍儲かっているということになる。……いやお役所や業者が悪いわけではなく、思考停止していた自分が悪かったのである。具合が悪かったら1日でも外して、問題なければ3ヶ月でも4ヶ月でも使い続けることに決めた。

・ところでふと思い出して冷凍庫を探したら奥から5年くらい前の赤福が出てきた。解凍して食べたけどとてもおいしかった。

11月1日「つまり毎日忙しくなってしまった」

・日月時男という人間のたくらみに乗り、ブログ連載をスタート(「日月時男」で検索してみてください)。

・ウェッブコンテンツは自己増殖的に成長し得るものであり、初期設定が万全であれば、そこから小説ないしゲームが自動的に立ち上がっていくのではないかという仮説に基づく実験。ていうか、毎日書かれ毎日読まれるブログという形式に可能性を感じているわけです。

・ぜひ、リアルタイムで楽しんでほしい。

2007.11.02 |  第331回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。