第347回

1月28日「アートとしての文学」

・「文学の触覚」と題したショウイングをやってると聞いて東京都写真美術館に(2月17日まで開催)。作家による小説や詩歌を、メディアアーティストの手によって立体的にビジュアライズする試み。

・空間に漂う光を手で受けたらはじめて文字として読める作品、など、80年代ビデオ・アートの延長の作品7~8点。あえてアートというくくりで作品を創り見せる機会は素晴らしいと思うので、テレビゲームやVRの洗礼を受けた世代の作品も、もっと見たいと思った。

・帰りの電車の中、ずらりとシートに並ぶ女子高生達が揃ってケータイ電話の画面を読みふける状況に遭遇。現代アーティストはこういう光景をどう見ているのだろう。

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1月29日「成長し続ける」

・『Wiiフィット』で目標体重を設定し、毎日測定してそれとの差を確認し続ける。と、それだけで体重は変化し、その数値に近付いていく。別に食事制限しなくても、運動しなくても、意識下の力がある程度、代謝をコントロールするのである。

・さて。これでたいていの人は目標体重を現状マイナスに設定してると思うけれど、そこには危険もあるということを認識しといた方がいい。体重を減らせ、というのは、衰弱せよ、ということだ。それを自分の体に命令しているわけだ。

・健康になりたかったら少しずつ、太るように設定するべきなのである。30代でジャンキーになったバロウズはそれから衰弱するどころか60になっても70になっても80になっても元気だった。彼は、麻薬やってるおかげで老化を止めることができる、という意味のことを書いていた。生物は成長をしている期間は老化しない。例えばミミズを周期的に収縮させれば、いつまでも成長を続けるため、いつまでも死なない。人間も、麻薬によってダメージを与えれば損傷した肉体を回復させるために、いつまでも成長期が続いているのと同じ状態となり、老化しないのだ、と。

・まさかそんな話を鵜呑みにするわけにはいかないが、体が大きくなり続けている間は老化しない、というのはうなずける、逆に、ダイエットしてる人って急激に老けるでしょ。もちろん太り過ぎもいけないから、若いうちに痩せておいてすこーしずつ太っていくのがコツなのである。僕は40を超えてからは毎年365グラムずつ太るようにしている。1日に1グラムだ。

1月30日「どっち?」

・アーティストなのか、クリエーターなのか決めるべきだ。そしてアーティストは金のことを、クリエーターはわがままを、言わないスタンスを覚悟するべきだ。もちろん1人で2つのスタンスを使い分けることもあるだろうが、個々の創作活動において、ごっちゃにしてはいけない。ごっちゃにするから、知的所有権や適正収益の問題がややこしくなる。

・どっちの人なのか外側から判断する方法は、名刺を持ってるか持ってないか、など。

2008.02.03 |  第341回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。