第359回

4月18日「泣きゲー、ではない」

・早稲田大学の河合隆史教授は、VRやゲームといったテーマに正面から取り組んでいる優秀な学者だ(こういう領域においてはマスコミ受けを狙って結論を先に作ってから実験をしているインチキ学者も実に多い)。以前この人と話していて、ゲームの効用を実証するには効用のあるゲームを作ることがベストだ、という話になったことがあった。河合さんはそのテーマに取り組み、一つの成果を上げた。監修した『99のなみだ』(バンダイナムコ/DS)というゲームが完成したのである。

・さっそくテストプレイさせてもらった。「泣く」ことの癒し効果を重視し、プレイヤーごとの心理状態に合わせて感動系のショートストーリーを提示してくれるソフトだ。位置付け的には、2ちゃんねるで生まれたショートコンテンツ文化(極限まで短い文章で泣かせる/笑わせる技法)を延長したものと言えそうだ。今2ちゃんの泣ける系まとめサイトに癒されている大人はすごく多いのである。

・ネット上では膨大な名無しさんの実体験から生まれたエピソードが自然とセグメントされて浮上していくわけだが、ここではプロの作家陣が書きおろしている。そのせいか、システムにも制作者側の自意識が強く出ているように感じられる。物語が始まったら、早送りなどの操作はできなくなり、約10分間、画面上に流れる文字を設定された速度でじっと見続けさせられる。パソコンやケータイではなく映画の方向性をはっきり目指しているわけだ。

4月22日「文芸合宿同窓会?」

・カフェ予定地@中野ブロードウェイにて粛々と開店準備。してたら作家さんが次々と(乙さん、佐藤さん、滝本さん、西尾さん)いらしたのでここぞとばかりコーヒーいれまくる。みんな優しくて目が血走ってくるほど飲んでくれた。

・そういえば砂糖とかミルクとか出すの忘れていた。渡辺さんがあんまり真剣にいれてるからブラックで飲まなくちゃ怒られると思って、と言われた。

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4月23日「ゲーム第一世代、老後に突入」

・ゲームのダウンロード販売が盛んになってきたおかげで、昔のクソゲーを探すのが楽しい。ただしクソゲーの味わいは当時の周辺事情と一体になって初めて理解されるものなので、語り部が必要である。雑誌とかテレビには無理かなあ。

・マガジングレート連載の『宮ちゃんの戯夢人生』(宮崎かずしげ)は面白いので単行本にして下さい。

2008.04.28 |  第351回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。