第378回

8月25日「これは凄い映画です」

・『バットマン・ダークナイト』。もちろん主役はジョーカー! 悪者の設定に、この10年ハリウッドは苦心惨憺していた。巨億の富、とか、世界征服、とか、そういう目的が無効になってしまっていたからだ。ここに、意味もなくただ悪い、という究極の敵役が出現してしまった。

・そんな存在に相対する時バットマンも、ただ清く正しく美しい正義の味方では、いられないのだ。正義が悪を喚起してしまうことの矛盾。ヒーロー映画にあるまじきこのテーマを軸に、クリストファー・ノーラン監督はシリーズの設定や映画的なお約束までぶっちぎって、最初から最後までひたすら疾走する。

・ものすごく重いテーマが、ものすごく速いテンポで進んでいくわけで、その映画としての仕事量は過去最大級である。観る前に体調を整えておくこと、それから、観た後に一人でぼんやりする時間を取っておくことを、お薦めする。

8月28日「これは良いゲームです」

・『AFRIKA』発売。PS3発売前から映像だけが公開され、話題となっていたゲーム。サバンナの野生動物達が実にリアルに再現されている。

・眺めて楽しむ「CG技術見せびらかしソフト」かと思っていたのだが、それだけではなかった。ゲームとしてもきちんと仕上げられている。動物達にうまく近寄り、シャッターチャンスを捉えて写真を撮る。動物との距離感を楽しむというか。これがなかなか奥深くてハマれるのだ。指示通りの写真を撮ることに一生懸命になるのも、全ての動物を網羅しようとがんばるのもいいが、ただふらふらと歩き回り、動物を見つけ、カメラを構えてじっと待つ時間が、とても愉しい 。

・むしょうにサファリ行きたくなるなぁ。サファリパークでもいいか(写真はゲーム画面ではありません)。

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8月29日「自分より長く生きる自分とは」

・小説『吐田君に言わせるとこの世界は』の単行本化が決定したので、さらにしつこく推敲している。悔いの残らない形で世に出したい。

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。