第384回

10月10日「東京ゲームショウ2008・考察」

・今年の東京ゲームショウでは、巨大化と細分化、両方の動きを強く感じた。

・スクエニ『FFアドベントチルドレン』コナミ『悪魔城ドラキュラ』カプコン『バイオハザード』など、大作ゲームのノウハウを延長することにより映画業界へ進攻していく目論みが目立っていた。進化したCGを機軸とした新しい映画をプロデュースしていこうというわけだ。大手メーカーのビジネス戦略としては正しいと思われる。そのモデルが成立したのち、デジタル映画のあくまでも一つの見せ方としてインタラクティブな環境=ゲームもある、という考え方にパラダイムを変えていくかもしれない。坂口さんは早すぎたんだね。

・一方で携帯ゲーム機の世界では新機軸の企画が続々と現れている。DSのマーケットサイズを前提とした一般向けタイトル (禁煙やガーデニングや鉄道知識など、テーマは限りなく拡大している)。そしてハイスペック化と低価格化を極めたパソコン環境では、脳波スキャン技術を使ったインターフェイスなど、未来につながるアイデアも、多数提示されている。

・ここから先は、すごくマニアックなフェティッシュな感性をどう具現化するか、ゲームがその試みの場として活用されていくことを予想する。例えば、女の子をどう表現するか。バーチャルとリアルが交錯する時代には必ず「アイドル」の存在感が浮上する。ミクスト・リアリティー技術を応用して、自分のデスクの上に美少女メイドを飼う『ARis』や、3Dバーチャル世界であえて美少女ゲームキャラクター達と暮らすオンラインサービス『ai sp@ce』。あるいは、ヒットと進化を続ける『アイドルマスター』。 このあたり、いずれもリアル志向の「美女」ではなく、アニメ絵の「美少女」が使われていることが興味深い。

・萌えという言葉を単なるオタク流行キーワードと片づけるべきではない。おかしな人々のゆがんだ性欲が狭い世界で発露されてる、なんて偏見も、もったいない。アイマスのムーブメントは特に良いサンプルだ。アニメ系美少女が獲得していくリアリティーとは何か。それに対してファンが抱く欲望や情熱は、もちろん肉体的には決して成就されないものだ。では、一体どこに向かっているのか。

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2008.10.20 |  第381回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。