第404回

2月26日「名作キャバゲーでもある」

・『龍が如く3』発売。最先端ゲームでありつつ、任侠映画の正統後継者でもある。日本の街の美しさ、日本人の顔の美しさを、きっちりと描写しているところが好きだ。

・このゲームをやり込んだ後に初めて歌舞伎町に行った人は、愉しめるだろうね。そしてリアルに再現して面白い歓楽街として、新宿歌舞伎町に続いて沖縄国際通りを選んだセンスも良い。違和感のないエキゾチシズムが、ゲームのイメージをしっかりと支えている。そしてキャバクラ部分特にキャバ嬢育成モードの作り込み。こうでなくちゃ。

2月27日「冷戦終了後のスパイ映画」

・『バーン・アフター・リーディング』試写。 コーエン兄弟の新作。情報流出、出会いサイト、離婚訴訟、など、など今的なシークエンスを組み合わせ、下世話な男女関係から国家機密までが同レベルで絡み合う現代のリアルをうまく描き出す。セリフは練り込まれていて、ジョージ・クルーニー、ジョン・マルコヴィッチ、ブラッド・ピットといった名優陣の怪演が冴え、実に飽きない。

・事件は複雑怪奇にこんがらがっていくが結局、全ては、ばかばかしくなるって結論がすばらしい。あらゆる経済活動や人間関係がうずまいている地上をグーグルアースでながめた時、なぜか「なーんだ」と思えてしまう、あの感覚(写真は本文と関係ありません)。

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2月28日「まだ、よかった?」

・『ファウスト』誌に掲載予定の小説を脱稿。ひきこもりをテーマにした読み切り連作『Hな人人』、今回は文字数を増やして書き込んだ。

・話は変わるが、物書きを始めて30年、原稿の締め切りを破ったことは一度もない。これは自慢ではない。僕の場合、例えば追いつめられている時に締め切りが伸びたとしてもうれしくない。そのぶん、自分の寿命が縮んだのと同じことだと考えてしまうからだ。だけど、次の『ファウスト』はいつ出るのだろう。もしかして他の執筆陣はまだちいとも書いてないんだろうか? 1年後とか2年後でも良かったんだろうか?

2009.03.08 |  第401回~

PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。