第435回

9月25日「新プロジェクト発表」

・『のせすぎ!  中野ブロードウェイ』(辰巳出版)という本の制作をお手伝いしている。中野ブロードウェイという不思議空間の秘密を徹底的に解き明かそうという企画。

・制作はKカフェを拠点に進め、そしてその過程を<ニコニコチャンネルGTV>からたえず発信していく。今日はその第1弾としての、ニコ生放送。編集者の仲村瞳さんとマンガ家の金子生さんに出演してもらい、本の中の非常に重要な記事のメイキングを開示してもらった。というか金子さんは今このビルの中の「ミステリースポット」を取材中で、当然ながらKカフェや名物UFOコーヒーもその対象になったわけである。

・中野ブロードウェイというリアルの拠点そしてニコニコ動画というバーチャルの拠点を活用して、新しい形の創作活動を模索したいと思っている。「っていうのはいったいぜんたいどういうことなんすか」という問いに今後、こういう具体的なプロジェクトをもって答えたい。

9月28日「タコシェ経由で来た人」

・『のせすぎ!  中野ブロードウェイ』企画で、ニコニコ生放送。今日はあのジューシーなライターアイドル、小明さんのインタビュー。ごめんなさい中野のこととかあんまり詳しくないんですよごめんなさいごめんなさいと謝りながら、僕らも知らないような面白いネタを次々と出してくる。話の内容も濃いし、進行にも気を使ってくれるしで、本当にありがたかった。

・文章にも独特の才能がある人なので『アイドル墜落日記』(洋泉社)お薦めです。あえて心のカサブタをはごうとする自虐性。けれどその下からは傷痕ではなくゆでたまごのようにきれいな肌がつるんとでてくる意外性。この人、もちろん『のせすぎ!』にはライターとしても参加されている。僕もがんばらなくては。

9月29日「中野ブロードウェイのテーマソング」

・コンテンツは、そこにアクセスしてきてくれる読者や視聴者と一緒に新しい文化をしかけていくためのツールとして使うべきなのだと思う。『のせすぎ!』発刊記念のプロジェクトとして、中野ブロードウェイのテーマソングを作ることになった。この本の編集チーム(中野ブロードウェイ奇談団)の誠意が伝わり、中野ブロードウェイ商店街の協力も、正式に頂くことができた。

・田渕純さんという、このプロジェクトにとって最高の人と出会うことができた。『和田弘とマヒナスターズ』の最後のヴォーカルだが、まだ若く、美しい。そして特に歌い始めると、もの凄い存在感を発揮する。本当に全身が震えるほどの。そう昭和のムード歌謡にはこういう力があったのだ。そして、それはニコニコの生放送でしっかり伝わる種類のものだ。

・今日は1時間の生放送の中で、その歌を作詞作曲してしまおう、という試み。田渕さんも中野歴が長く、この地の魅力について深く知っている人だ。曲作りについては田渕さんと編集者の仲村さんと一緒に、中野ブロードウェイのイメージについて語りあいながら進めていった。もちろんニコ生でみんなに中野ブロードウェイのキーワードをがんがん書き込んでもらいながら、フレーズを拾っては田渕さんにギターをつま弾いてもらい、歌ってもらうわけである。

・試行錯誤しながらも、制限時間内に一通りの曲をきちっと仕上げ、最後には通しで歌って頂くことができた。その歌声はコメントもしばし止まるほどムーディーなものだった。ニコニコ上には素晴らしい素人芸が沢山あるが、あえて言えばこれが、プロの仕事なのである。

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PROFILE

渡辺浩弐
渡辺浩弐
作家。小説のほかマンガ、アニメ、ゲームの原作を手がける。著作に『アンドロメディア』『プラトニックチェーン』『iKILL(ィキル)』等。ゲーム制作会社GTV代表取締役。早稲田大学講師。