日本とフィリピン、両国の防衛協力と戦時中の知られざる逸話(上)

TC-90-6819

フィリピンに貸与するTC90

海上自衛隊機と巡視船がフィリピンへ

 中国の海洋軍事進出が止まらないなか、日本は「海と空」の両面からサポートするため、フィリピンに対して防衛協力を始めることになった。  まず、「空」に関しては海上自衛隊の練習機であるTC90を、日本がフィリピン海軍に対して有償貸与を開始した。自衛隊機が他国で使用されるのは初めてで、これによりフィリピンの警戒監視能力の向上が図られる。なお、TC90の導入は災害救援面でも大きな期待が寄せられている。  また、「海」についてはフィリピン沿岸警備隊に巡視船を10隻供与する。これは2013年の日比首脳会談で表明されたまま、フィリピン側の事務手続きの遅れで滞っていた。それが、今年になってようやく動き出し、最初の巡視船が8月18日にフィリピンのマニラに到着した。  この巡視船もフィリピンの海上警備能力を強化するためで、安倍政権が2014年4月に決めた防衛装備移転三原則を基に、今回の巡視船提供ができるようになった。  いずれも、南シナ海で着々と軍事進出する中国に対するフィリピンの防衛力強化を目的としたものといわれ、中谷防衛大臣(当時)も言うように、フィリピンの能力向上は地域の安定化につながる。

中国の脅威にどう対処するのか

 傍若無人な中国の海洋進出について、『昭和の戦争の真実』(育鵬社刊)で軍事問題にも詳しい作家の拳骨拓史氏に聞いてみた。  中国は太平洋をどう捉えているのでしょうか? 「ポーラーステレオ図法の地図で東アジアを見た場合、宗谷海峡・津軽海峡・対馬海峡・沖縄・台湾・フィリピン等を結ぶ一連の島々が、中国にとって目の上のたんこぶに他なりません。中国からすると、太平洋に出る際に、これらの島々は間違いなく邪魔でしょう」  日本とフィリピンのあいだで進められている防衛協力はどんな意味があると思いますか? 「巡視船10隻を供与して、海上自衛隊練習機TC90をフィリピンに貸与するということは、領土拡張の野心を抱く中国包囲網の形成に有効な手法だといえます」  中国に対しては刺激的な行動をとらないほうがよいという意見もありますが? 「中国が、日本と沖縄、台湾、フィリピンの関係を遮断することは、中国にとって地政学上有利に働きます。しかし、逆にこれらの国が結束することは、アジアの盟主を目指というあからさまな野心を抱く中国にとっては、むしろ脅威をもたらすことになります。日本としても周辺国との連携は欠かせません」

南シナ海の平和と安定に向けて

 1991年、スービック基地から米軍が完全撤退したあと、中国はミスチーフ礁を占拠した。一方、2004年になるとフィリピンとの間で、中国は地下資源の共同探査を合意した。  硬軟織り交ぜ、時間をかけながら拡張路線を進める中国に対し、日本がフィリピンに対して初めて防衛協力を行うことの意味は、やはり大きい。  2016年、台湾とタイとともに、フィリピンでもAKBの姉妹グループ結成が決まった。もともと経済だけでなく文化での結び付きも強かった日本とフィリピンだが、防衛面での連携を強化が進めば、南シナ海の平和と安定に役立つに違いない。 (文/育鵬社編集部A)
昭和の戦争の真実

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