いまだに日本を覆う“敗戦後遺症”はアメリカ大統領選挙でも露呈した(下)

極東国際軍事裁判

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戦後はGHQの占領から始まった


 GHQ(連合国軍総司令部)による“精神的な占領”が続く日本の実態を明らかにし、日本がリアリズムを取り戻すための発想法を提示したのが『敗戦後遺症を乗り越えて』(育鵬社)だ。同書には伊藤隆氏、渡部昇一氏、高橋史朗氏、宮家邦彦氏ほかが執筆にあたっている。

 アメリカ製の日本史観に基づいた歴史解釈を「東京裁判史観」と考える近現代史の第1人者・伊藤隆東大名誉教授は、本書のなかで占領下の日本の状況と現代への影響をこう述べる。

「実際には言論が全く不自由だったというのが日本の実態で、GHQが統制する以上に自粛してしまい、それが今日まで習慣づけられたことも戦後の敗戦後遺症の一つです」

 伊藤先生は、GHQが占領政策を作成するにあたって、カナダ人の共産主義者ハーバート・ノーマンの影響が大きかったことを指摘する。そして、GHQの情報統制によって歪められた日本人の思考(敗戦後遺症)から早く克服しなければいけないと主張する。

見えないところで進行する検閲


 GHQが行った対日占領政策のなかで、「WGIP」(戦争についての罪悪感を日本人の心に植え付けるための情報宣伝計画)の研究を続け、その概要を本書で執筆しているのが高橋史朗明星大学教授だ。高橋教授の「GHQによる占領政策」によれば、バーンズ米国務長官は、日本人の「精神的武装解除」を目指していた。

 そもそも、GHQで対日政策を担った学者たちは、偏見に満ちた学説や先入観から、日本人の「本性に根差す伝統的軍国主義」があると捉えていた。また文化人類学者のミード教授は日本人の国民性を「病的で幼稚で未熟な劣等感に基づく集団的神経症」と論じた。このような日本人理解が基礎となって具体的な政策が実行されていった。

 実は、GHQによる検閲は終戦後の翌9月には始まっている。原爆投下批判記事を掲載した数日後に朝日新聞が、GHQから2日間の発行停止処分を受け、同時にGHQはプレス・コードを通達した。ちなみに朝日新聞は指示に従っただけでなく、自主規制である自己検閲を制度的に行っていく。

 GHQが行った検閲というのは、発表されたものに対して行われる事後検閲ではなく、事前の検閲であった。GHQに雇われ、検閲の仕事をした日本人も5000人に上るというが、アメリカに協力した日本人についての実態は、現在もあまり明らかになっていない。

 検閲の対象となったのは30項目にもおよび、とくに憲法に関しては「GHQによる憲法草案の起草への批判」が挙げられている。なかには、「検閲制度への言及」というのもあり、要はGHQによって日本が検閲を受けている事実を国民に知らせないということであり、アメリカの考える通りの情報しか表に出てこなかったのだ。

歴史教育への後遺症は今も残っている


 占領政策のなか一環として、アメリカが主導して作成した「太平洋戦争史」を学校の教材として使用することを日本政府に強いたが、渡部昇一上智大学名誉教授は、アメリカが日本に行った罪の中で、特に歴史教育の弊害が大きかったと憤る。

 渡部先生は、占領下で優遇された「戦争利得者」が戦後の言論界や教育界を牛耳り、それが現在まで続いていると問題視する。GHQに協力した「敗戦利得者」が、日本が独立した後も残り、「占領軍が、日本人から歴史を奪うことでプライドを奪う、という目的を継続していった」と。

 渡部先生は、教科書における歴史記述が変更された具体例として、①中国の歴史資料と整合性があるもの以外は出さない方針で『古事記』や『日本書紀』が削られた、②『魏志倭人伝』で取りあげられているから卑弥呼や金印を大きく載せるようになったことなどをあげている。(*戦前、『魏志倭人伝』は信用できないものともいわれた)

「無数にある歴史事実を一定の距離と方向から眺めた時に見えてくる虹がその国の歴史(国史)である」という英国人学者オーエン・バーフィールドの言葉に渡部先生は共感を寄せ、「虹を見せまいと努力したのがアメリカの占領政策で、日本の左翼勢力と日教組によって、戦後生まれの多くの日本人が歪んだ歴史観を植え付けられることになった」と本書で訴える。

 そのほかの論考も含め、より詳しく知りたい方は、ぜひ『敗戦後遺症を乗り越えて』(育鵬社)をお読みいただきたい。(文/育鵬社編集部A)

敗戦後遺症を乗り越えて

日本人がリアリズムを取り戻すための1冊。

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