国立の歴博が、入場料収入をアップさせる秘訣(1)――「一面的」で展示側の認識が強すぎる?

歴博の第6展示室に掲載されている「アジア・太平洋戦争」という用語

 本サイトでは、「歴史博物館は、歴史の面白さを伝えられるか」と題し、10月31日に4回にわたり記事を連載した。  その連載第3回目では、千葉県佐倉市にあるわが国で唯一、国立の冠をつけた国立歴史民俗博物館(以下、歴博と略す)が、毎年度16億円~17億円の運営費交付金(国からの補助金、つまり税金)を得ながら、自己収入の大きな柱である入場料収入が1年度当たり5000万円ほどに過ぎず(入場料収入の運営費交付金に対する割合はわずか3%)、事業規模に比してその入場料収入の少なさは、展示内容が面白くないためではないかと指摘した。  一方、広島県立歴史博物館(広島県福山市)の「幻の町・草戸千軒」や、新潟県立歴史博物館(新潟県長岡市)の「縄文の四季」などの実物大の再現展示が、見る人に歴史の面白さを伝えており、参考にしてほしいという提言も記した。

日本は好戦的な国なのか?

 しかし、国立の歴博の展示には、そうした提言のレベルを超えた、何か構造的な問題が内在しているように思える。  その端的な一例が、歴博の第6展示室(現代)の入口近くに設置されている解説文である。  上の写真を見ていただければ分かるように、「日本は、(中略)数々の戦争を繰り返した。(中略)アジア・太平洋戦争などである」と記されている。  まず、「日本は、(中略)数々の戦争を繰り返した」という点である。表面的な事実だけを見れば、確かにこの時代の日本は、日清・日露戦争、第一次世界大戦、そして第二次世界大戦を経験している。単純にこの説明を読んだ小中・高校生などは、日本は非常に好戦的な国だったと思ってしまうのではないか。    近現代の戦争をテーマにした歴史博物館としては、靖国神社の遊就館(東京都千代田区)、 呉市海事歴史科学館(広島県呉市、愛称=大和ミュージアム)、知覧特攻平和会館(鹿児島県南九州市)などがあることは前回の連載第2回目で紹介した。これらの博物館では、近現代における当時の国際情勢とわが国が置かれた立場が、映像や年表などの資料を基に、「多面的」に理解できるよう工夫されている。  一方で歴博の展示には、当時の国際情勢に関する解説が極めて薄く、その中で「日本は、数々の戦争を繰り返した」と記述するのは余りに「一面的」である。これでは「展示側の認識」が強く示されすぎで、見る人の思考を制限してしまい、興味・関心を持てなくしてしまっているように思える。  こうした展示スタンスが、見ても面白くなく、入場料収入が増えない要因になっているのではないだろうか。(続く) (文責=育鵬社編集部M)
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