第五十九夜【前編】

禁じられた恋路は桃源郷か魔境か――
三十路を境に人妻の魅力を再確認

【担当記者:スギナミ】

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 一介のマスコミ人にとって大切なのが若者たちとの語らいだ。その日も僕は、西川口の「富士そば」で、地元ピンサロの男性店員たちと「川口vs蕨 仁義なきピンサロ抗争の行方」についてバカ話を繰り広げていた。するとそのうちの一人が安酒を痛飲しながら、こんな事実を吐露したのだった。

「ウチのカミさん、幼稚園のママさん仲間に、大宮の昼キャバで一緒に働こうって誘われてんだよ」

 どうやらそのお店では子育てのひと段落した有閑マダムが、昼の空き時間を利用して昼キャバで小銭を稼いでいるらしい。”人妻”といえば、今も昔も、普遍的な人気を誇る業界のキラーコンテンツだが、6年前、エロ実話誌の編集をしていた僕には、その魅力はわからず仕舞いだった。当時の上司に「男は三十路を超えたら、熟女の味が恋しくなる」と言われたこともあるが、今年32歳を迎えたスギナミは、果たしてその境地に達することができたのか。その問いに答えを出すべく、まずは件の大宮の昼キャバへと向かった。

大衆店と高級店のそれぞれ異なる魅力

平日の昼下がり。”県下最大の繁華街”と誉れ高き大宮駅東口にたどり着いた僕は、お目当ての店「S」を発見。「出血サービス1時間2000円」と殴り書きされたチラシを横目に入店した。

 店内はなかなかの盛況。ガードマン姿のブルーワーカーやら、仕事をサボっていると思わしき営業マン風の男性が楽しげに談笑している様子がイヤでも目に入る。

 この日、席についた女性は3人。推定年齢は揃って30代後半。バツイチ1名、現役妻2名という香ばしいラインナップ。見た目も……まあ悪くない。特に名取裕子似のAさん(公称・36歳)とのやりとりは、まさに”生ツバごっくん”ものだった。

「ダンナが夜かまってくれないのよ」、「欲求不満になったりしないんですか」、「お兄さん……強そうね、お酒も強いし……ウフフ」。

 上目遣いでそう囁かれて狂わない男はいない。このまま深みにハマれば、水道橋のサウナに置かれていた官能劇画誌『漫画ローレンス』も顔負けの愛欲劇が待っていそうな予感もする。

 Aさんが席を離れ、場内指名を入れたい衝動に駆られたが、その後ついたパチンコ狂・Mさん(公称・38歳)の、「海物語」の話に気力を奪われ、店を後にした。

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大型ビルや複合施設が並ぶ西口とは違い、ディープな飲食店や
娯楽施設が密集している東口エリアが、埼玉経済の中心地・大宮の
夜遊びの定番スポットだ

撮影/石川真魚 取材協力/井口 裕

スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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