第百十三夜【後編】

個性派キャストが店の”色”をつくる

中野通りをひたすら南進すること10分。繁華街の喧噪から離れたあたりに、「中野コメディエンヌ」はあった。店内には6、7人の女のコたちが常時在籍。彼女たちの服装は銭湯帰りのようなジャージ姿からお姫様風と十人十色。

「ウチのお店は服装に制約はないんです。えっ、ドレスですか? いやぁ、私たちがドレスを着たら、ドレスに失礼じゃないですかぁ、アッハッハッハ~ッ」

開口一番、豪快に笑うのは舞台役者のかたわら、お笑い修業をする村上典子さん。天才バカボン風の顔立ちに似つかわしくない胸の谷間に、早くも目のやり場に困るような困らないような、異空間に投げ捨てられた錯覚に陥る。

「違います。異空間じゃなくって、ここはアイカリーナ星。私たちは宇宙から羽のついたハートの馬車で、お仕事やライブがあるときにだけ地球に舞い降りてくるのです」

どこかで聞いたことのあるようなフレーズを、虚空を見つめて諳んじるように語るのは、”なりきり聖子”のプリンセス愛華嬢。地下アイドルと女芸人の二足の……って、そもそも、そんなワラジあるのか?

「愛華ちゃんは自我が強いんですよ。私の相方の男と一緒。あ、初めまして。私、”ふるやいなや”いいます。男2女1の『どりーみーぱんだ』ってトリオのボケ担当で……あ、さっき言った自我が強いってのは~(以下略)」

てな具合に、ハイテンションに早口でまくしたてるふるや嬢。それを横目で見つつ、「あ、アタシが一番生き生きしているのはティッシュ配りのときなんで、お気遣いは無用です」とクールな自虐ネタで場を盛り上げるのは、声優としても活動するさつきさん。笑える/笑えない以前に、巷ではまずお目にかかれない”変な女のコたち”の珍妙なトーク、不思議な雰囲気に煽られて、ついついお酒が進んでしまう。

「在籍するコは25人。それぞれ目指している芸風、個性は違うので、ぜひいろんな”味”を試してみてください」(店長)

笑いの好みはみな違うもの。一人でも”ツボ”のコを見つけてしまえば、何度でも通いたくなるお店なのかも……。

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(写真右下から時計回りに)ピンからトリオまでこなすハイテンション芸のふるやいなやさん、地下アイドルの亜流・プリンセス愛華さん、「M男大歓迎です」の舞台女優兼芸人・村上典子さん「期待しても何も出ませんよ」と謎の美女系芸人・さつきさん

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「お母さんに切ってもらいました」(ふるやいなや)。
“わかめちゃんカット”が似合ってる

中野コメディエンヌ

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毎日1回はネタ見せの時間がある。
タイミングはお店の込み具合等に応じて

住:東京都中野区中野中央4-26-1 B1
電:03-3380-0282
料:90分4980円(焼酎、ウイスキー飲み放題)
営:20時~翌2時
休:月曜

協力/猪口貴裕 撮影/石川真魚

スギナミ 東京都生まれ。主な出没地域は中野、高田馬場の激安スナック。特技は「すぐに折れる心」
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