“レッスルマニア9”を盗んだホーガン――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第139回
試合終了のゴングが鳴った瞬間、ホーガンがリングサイドに現れ、レフェリーのアール・ヘブナーにフジの反則行為を直訴。リング上ではマイクをつかんだフジが「ヨコヅナはだれの挑戦でも受ける」とホーガンを挑発し、リング下ではブレットがホーガンに対し「オレの代わりにやってくれ」とパントマイムのようなゼスチャーをしてみせた。
ホーガンがリング内にすべり込むと、試合開始のゴングが鳴らされ、ホーガンはランニング・レッグドロップからわずか23秒のファイトタイムでヨコヅナをフォール。あっというまにチャンピオンベルトを奪った。
第5試合に出場したときのホーガンのコスチュームは定番のイエローのショートタイツだったが、メイン終了後にもういちど観客のまえに登場してきたときのホーガンは、ふだん着バージョンの赤いロングスパッツを身につけていた。観客はホーガンの出現をボーナス・トラックととらえた。
プログラムには載っていなかった“レッスルマニア9”のフィナーレは、ホーガンと観客の“再会シーン”となった。ホーガンがお得意のポージングをはじめると、いつのまにかブレットはその場からいなくなっていた。ビンスは想定外のハプニングという形でホーガンとの密約を守り、ホーガンはホーガンで計画どおりに“レッスルマニア9”の主役の座とWWE世界王座のチャンピオンベルトを手にしたのだった。(つづく)
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文/斎藤文彦 イラスト/おはつ
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