おうちで居酒屋――連続投資小説「おかねのかみさま」
土曜日 朝 美琴宅(久里浜)
トントントントントントン…
美「…ん…」
死「フッフフーン♪」
美「んぁ…」
死「オ。オハヨ」
美「おはよう…」
死「アサゴハン、ゴハンデキテルヨー」
美「…」
死「ヤキトリ-、ダシマキ-、カラアゲ-、ポテト♡」
美「…」
死「メシアガレ♡」
美「シニガミさん。」
死「ハイ」
美「わたしはいまとても迷ってます」
死「ハイ」
美「あなたとの生活が避けられない運命だとしたらそれは素直に受け入れます」
死「ハイ」
美「だけど毎朝居酒屋メニューを食べつづけるのはもう限界です」
死「エッ…」
美「ごめんね、言おうかどうか迷ったんだけど…」
死「…」
美「でね」
死「ウン」
美「この状態を解決するためには、方法がふたつあるとおもうの」
死「オー」
美「オーじゃない」
死「ハイ」
美「ひとつは、シニガミさんが新しい料理を覚える」
死「アー、ウン」
美「もうひとつは、わたしが料理を担当する」
死「ウンウン」
美「でもね」
死「ウン」
美「そもそもなにこの生活」
死「エッ?」
美「前に、サイゼリヤで酔った勢いで言ったかもしれないけど、あたし彼ピッピと一緒にゴールデンレトリバーのジャスティンくんの散歩をして、夕暮れの七里ヶ浜を歩いて、冷えたモヒートをガッシャガッシャいわせながらかきまわして、彼ピッピの手の甲にミントの葉っぱ乗せてインスタに上げるのが夢だったの」
死「パンケーキジャナカッタ?」
美「それは冬デートバージョン!」
死「ハイ」
美「夏でも冬でもいいんだけどね、あのね、そんな日々を思い描いていた元女子大生のわたしが食べてるのは、だし巻きとヤキトリとからあげとポテトでしょ。380度ちがうでしょ。これ」
死「シクシク…」
美「…」
死「チラ」
美「嘘泣きしないで」
死「ハイ」
美「…」
死「…」
美「…」
死「ワカリマシタ」
美「?…なに…が…わかったの?」
死「リョウリ…ベンキョウ…」
美「あー」
死「シマス」
美「そうなるよねー。生活の質がちょっと向上しちゃう。なんだろなーこれ」
死「ウレシイ?」
美「素直によろこべない」
死「ヨクワカラナイ」
美「だいじょぶです。あたしも、料理、おぼえます」
死「…」
美「…」
死「…ヤ」
美「?」
死「ヤキトリサメチャウヨ…」
美「……いただきます…」
次号へつづく
【大川弘一(おおかわ・こういち)】
1970年、埼玉県生まれ。経営コンサルタント、ポーカープレイヤー。株式会社まぐまぐ創業者。慶応義塾大学商学部を中退後、酒販コンサルチェーンKLCで学び95年に独立。97年に株式会社まぐまぐを設立後、メールマガジンの配信事業を行う。99年に設立した子会社は日本最短記録(364日)で上場したが、その後10年間あらゆる地雷を踏んづける。
Twitterアカウント
https://twitter.com/daiokawa
2011年創刊メルマガ《頻繁》
http://www.mag2.com/m/0001289496.html
「大井戸塾」
http://hilltop.academy/
井戸実氏とともに運営している起業塾
〈イラスト/松原ひろみ〉
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