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“レッスマニア10”ブレット対オーエン――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第150回

 ビンスはこの時点ですでに裁判の準備のために約300万ドルの予算を計上し、ありとあらゆるケースを考えての“想定問答”のリハーサルをはじめていた。また、ビンスはこの“ステロイド裁判”とは別にジェシー・ベンチュラを原告とするビデオゲームの印税の支払いをめぐるもうひとつの裁判も抱えていた。  “レッスルマニア10”には(1)ブレット・ハート対オーエン・ハート(2)バンバン・ビガロ&ルナ・バション対ドインク(レイ・アポロ)&ディンク(3)“マッチョマン”ランディ・サベージ対クラッシュ(4)アランドラ・ブレイズ(メドゥーサ)対レイラニ・カイのWWE女子選手権(5)メン・オン・ア・ミッション(メイベル&モー)対ケベッカーズ(ジャック・ルージョー&ピエール・オーレット)(6)ヨコヅナ対レックス・ルーガーのWWE世界選手権(7)アースクェイク対アダム・ボム(8)レーザー・ラモン対ショーン・マイケルズのラダー・マッチ(9)ヨコヅナ対ブレット・ハートのWWE世界選手権の全9試合がラインナップされた。  同年1月の“ロイヤルランブル”における30選手出場・時間差式変則バトルロイヤルがブレットとルーガーの“ダブル優勝”という結果に終わったため、“レッスルマニア10”ではこの両選手が別べつにWWE世界王座に挑戦するという非常にめずらしいシチュエーションになった。“レッスルマニア”という大舞台のメインイベントが一枚看板ではなかったところがWWE内部のカオス状態を暗示していた。  ビンスは“90年代のホーガン”ルーガーを次期WWE世界王者候補のポジションに置くことにこだわったが、ブレットはあくまでも実力行使で“レッスルマニア10”の主役の座をゲットしようとしていた。ブレットが考えるところの実力行使とは、ライブの観客に審判をゆだねるというプロレスラーらしい発想だった。
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ブレット対オーエンのシングルマッチは…
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