ビンス無罪“ステロイド裁判”エピソード15=ハルク・ホーガンの証言――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第168回
検察側はホーガンことテリー・ボレアを証人として出廷させる交換条件として、この事件でホーガン自身が追求される可能性のある(偽証罪意外の)罪状からの免責を提示。ホーガンはこの司法取引に応じた。
マスメディアはホーガンを事件の“主犯”と分析していた。被告はビンスとタイタン・スポーツ社だったが、1994年当時のビンスと現在の“悪のオーナー”キャラクターとしてのビンスとではかなりイメージが異なり、アメリカのマスメディアは、この時点ではビンスをあくまでも“ホーガンのボス”ととらえていた。
ホーガンはこの裁判の1カ月前の1994年6月、WWEのライバル団体WCW(ワールド・チャンピオンシップ・レスリング)と専属契約を交わしたばかりで、法廷での“再会”はホーガンにとっても、ビンスにとっても想定外のできごとだった。
ショーン・オシェー検事が「あなたの職業は?」と質問すると、ホーガンは「自営業のエンターテイナーです」と答えた。「ステロイドを初めて使ったのはいつですか?」という質問にホーガンが「1976年だったと記憶しています」と答えると、傍聴席に陣どったリポーター、記者から「おーっ」とどよめきが起きた。ホーガンが公式の場でステロイド使用を認めたのはこれが初めてだった。
――試合会場でタイタン・スポーツ社のエグゼクティブが選手たちに現金を渡すことがありましたね。これはステロイドを買うためですか?
「ツアー中にエージェントが選手たちに現金を渡すのは“ドゥロー”――日本のプロレス用語、相撲用語では“はがみ”――といって、給料の前借りです。ステロイドを買うためではありません」
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