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ボブ・バックランドという“記号”――フミ斎藤のプロレス講座別冊WWEヒストリー第176回

 バックランドとビンスがほんとうに犬猿の仲だったのかというと、そのあたりの真相ははっきりしない。40代に手が届いたバックランドはWWEと再契約し、ダークグレーのスーツに蝶ネクタイ、クルーカットといういでたちの“共和党系ヒール”という政治家キャラクターに変身。カード編成上は中堅クラスよりもやや上のポジションを与えられた。  ビンスは、大ベテランのバックランドをブレットの腰からチャンピオンベルトをひっぺがす“刺客”として起用した。ポスト・ホーガン世代のキーパーソンとして急浮上してきたブレットはリック・フレアー(1992年10月12日=カナダ・サスカッチェワン)、ヨコヅナ(1994年3月20日=マディソン・スクウェア・ガーデン)をそれぞれ下してWWE世界王座を通算2度獲得したが、ビンスはブレットの知名度と全米レベルでの観客動員力に疑問を抱いた。  ホーガンのいなくなったWWEのリングにはブレット、アンダーテイカー、ショーン・マイケルズ、レーザー・ラモン、ディーゼル(ケビン・ナッシュ)ら新世代による複数スター性が導入されたが、ブレットはこの新システムに反発した。ビンスとブレットの静かなる確執は“モントリオール事件”の3年まえからすでにはじまっていた。  ビンスが描いたシナリオは、ベテランのバックランドをワンクッションにしたブレットからディーゼルへの“人事異動”。ホーガンと決別したビンスは、キャリア4年のディーゼルに“巨人信仰”を託したのだった。(つづく)
斎藤文彦

斎藤文彦

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