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ドゥテルテフィーバー現地報告 フィリピン人は外交政策に関心薄?

「暴言大統領」「アジアのキーマン」と日本のメディアでもてはやされ、フィリピンがかつてないほどの勢いで連日連夜取り上げられている。この熱狂ぶりに比べると、母国フィリピンの状況はやや温度差があるかもしれない。今年5月に行われた大統領選直後はそれこそ「Duterte」と書かれたリストバンドやステッカーが流行したが、それから半年近くが経過した今、街はすでに日常の景色を取り戻している。  とはいえ支持率は8~9割という高い値を維持している。街の声を拾ってみると、「変化」というキーワードが浮かび上がる。つまり国民が求めているのはこの国が良くなるための変化であり、有言実行のドゥテルテ大統領なら実現してくれるのではないかと期待しているのだ。
フィリピン

日々の生活で手一杯な国民

 ただし、「米国との離別」「国連脱退」宣言などのようにメディアで騒がれている外交政策については、閣僚や国会議員、一部の知識人の間では波紋を広げているものの、一般の国民には果たしてどこまで関心があるのかは微妙なところだ。試しに聞いてみると「米国はドゥテルテ政権の麻薬撲滅戦争が人権侵害に当たると非難したが、内政干渉すべきではない」(塗装業者の男性・57歳)、「これでフィリピンが独り立ちできると思うと、離脱宣言を歓迎できる部分もある」(コンドミニアム管理人の女性・48歳)などの反応が返ってきた。あるフィリピン人ジャーナリストはこう説明する。 「米国に親戚が住んでいるなど、その国と何らかの関係性がない限りフィリピン人は一般的に外交政策への関心は薄いだろう。自分の生活に影響を及ぼさないからである」  この傾向は恐らく、貧困層になればなるほど強まるとみられる。  フィリピンの1人当たりの国民総所得は約3440ドルで、日本の11分の1に相当する。つまり多くは貧困層で、ベニヤ板やトタン屋根を張り合わせた民家がひしめくスラムに住む者も少なくない。そんな生活環境にいる彼らの頭にあるのはやはり、日々の生活のことだ。明日は何を食べるのか、借金をいつ返そうか、仕事はどうしようか……。基本的には自分の身の回りの雑事に勤しんでいるため、「外交政策」と言われてもピンとこない。故にもっぱらの関心事は国内問題に向かうのではないだろうか。
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強硬に進める麻薬撲滅戦争の反応
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