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ファッションも哲学も簡単に伝わらなければ意味がない――ファッションバイヤーMB×哲学ナビゲーター原田まりる

人生のどん底で出会ったのは「ニーチェ」だった

原田:そう言っていただけてうれしいです。今回私が取り上げた哲学は、「実存主義」というものなんです。これは自分を題材にした哲学で、「生きることはどういうことか」とか「自分はどうあるべきか」とか、そういうテーマを扱ったものなんですよね。 MB:哲学にもいろいろカテゴリーがありますもんね。 原田:哲学って、本当にいろいろテーマがあるんですよ。たとえば、「水ってなんだ」とか「神ってどういう存在か」とかを突き詰めていくようなものもあります。私自身は、実存主義の哲学にすごく関心があって勉強してきました。そこで、「もっと多くの人にこの考えを知ってもらえたら、もっとみんなの人生を変えられるんじゃないか」って思ったんです。 MB:なるほど。ちなみに、原田さんご自身は、哲学を知って、人生は変わりましたか? というか、そもそも原田さんはなんで哲学に興味を持つようになったんですか? 原田:私、尾崎豊のファンなんですが、人生は不条理との闘いで、そこから向き合っていかないといけないなという気持ちは、昔から抱いていたんです。あと、哲学自体に触れたのは、高校生のときに中島義道先生の本を読んで、そこから大学でも哲学を勉強するようになりました。 MB:じゃあ、10代のころから哲学には興味があったんですね。 原田:はい。実際に私自身が人生で哲学に救われた経験もありました。 MB:どんなことがあったんですか? 原田:20代前半の話なんですが、当時、レースクイーンの賞をいただいて、「これから仕事を頑張るぞ!」というタイミングだったんです。でも、そのときに、体調を崩してしまって、とある病院に入院したら、そこがちょっと変わった治療をする病院で。なぜか神経を鎮静化する薬……みたいなものを投与されたんですが、その薬がカラダに合わなくて、逆にものすごく症状が悪化してしまったんですね。生々しい話なんですけど……。その薬が全然合わないまま量だけが増えていき、半年間くらいの入院をした後、退院しても廃人のようになってしまって。 MB:廃人……ですか。 ⇒【写真】はコチラhttps://nikkan-spa.jp/?attachment_id=1232421 原田:あんまり当時の記憶がないんですが、植物人間みたいでした。寝たきりで、ツバも飲み込めないし、会話しようにも呂律も回らなくて。さすがに「これはおかしい!」と親が思って、別の病院へセカンドオピニオンを取りに行ったら、「この薬は全然あなたに合わないものですから、正直、訴訟ものですよ」と言われまして(笑)。 MB:それは、医療事故じゃないですか! 原田:その薬をやめたら、徐々に普通の状態に戻っていったんですが。結局、入院してから普通の状態に戻るまで2年ほどかかっちゃったんです。だから、体調は治ったものの、仕事も大学ももう戻る場所がなくなってしまっていて。仕事でもせっかく大きな賞を取ったばかりで、「これから」っていうときだったのに。そんななか、悩みに悩んで、手に取ったのがやはり哲学書だったんですよね。 MB:どん底のなか、出会ったのが哲学だった……ということですね。 原田:そこで、「どんなに不条理なことがあっても、人生は受け入れることが大切」とか、実存主義哲学者の考えに励まされたんです。嘆いても、いつか人間は死ぬんだから、言い訳しても仕方ない。だったら、自分の力でなにかするしかないんだなって、その時に強く思って、またお仕事も勉強も頑張って、再起することができたんです。
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物事は感覚でなく、論理で説明してほしい
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ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。

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