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恋愛映画の匠・行定勲が語る「日活ロマンポルノのエロスと哀愁」

 AVが台頭し、衰退を余儀なくされたロマンポルノ。1人1台スマホ時代の今では、本番の映像がさらに手軽に見られる。しかし、行定監督はロマンポルノには、独特のエロスがあると口にする。 「クセになるようなエロさがあるんですよ。お決まりのように廃墟に女のコを連れ込んでヤっていたら、人が来たから喘いでる口を塞ぐとか。そういうイヤラしさはAVにはない。どこか笑っちゃうけどエロいっていう」  そしてロマンポルノ的エロスの先には、男の神髄ともいうべき、おかしみややるせなさがあるという。 「ロマンポルノには、それこそ多くの作品があって、コメディから青春映画までジャンルもバラバラだけど、必ず男のどうしようもなさというのが描かれてきた。どこかうまく生ききれていない鬱屈としている男がどうやって女に受け入れられていくのか……。やっぱり憧れですよ、ロマンポルノは。一見するとむちゃくちゃに思えるかもしれないけど、目の前に魅力的なダメ男がいたら、絶対にほとんどの女性が関係を持ちますよ。だって真面目な男だと重いでしょ? ダメな男ほどヤレるんです。ロマンポルノを観ればそれがわかるんじゃないですかね」  一般映画と過激なAVの狭間にあるからこそ生まれる独自のエロス。そうして男の哀愁がロマンポルノにはある。 <日活ロマンポルノ三原則> 一、必ず10分に1回濡れ場を盛り込む 一、総尺80分前後 一、全作品一律低予算、撮影期間は1週間 ジムノペディに乱れる 11月26日(土)より新宿武蔵野館ほか全国順次公開中。そのほかの同プロジェクト作品は塩田明彦、白石和彌、園子温、中田秀夫監督が手掛けている
ジムノペディに乱れる

ジムノペディに乱れる

【行定 勲】 ’68年、熊本県生まれ。『GO』(’01年)で日本アカデミー賞最優秀監督賞ほか、国内外で多くの賞を受賞。’04年には『世界の中心で、愛をさけぶ』がその年の邦画興行収入1位を記録した。代表作に『パレード』『円卓』など 取材・文/望月ふみ ©2016 日活
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異 Twitter:@mochi_fumi
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