蓮舫民進党代表の二重国籍問題と激変する世界(第3回)

法務省ポスター

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レッテル貼り

 この問題提起に対して、反論もありましたが、そもそも二重国籍が法的にだめなことを知らない人が多い。そして、法的にはだめで許されないかもしれないが、日本がむしろ国際的に非常識なのだから、そんなものを守る必要がないという人がいました。  でも、これはおかしなことだと思います。例えていうと、大麻、売春、賭博は外国では認められている国は多いから、法的にはだめでも日本でも守らなくて良いということになります。いろんな分野で、それを法的に認めている国もあれば認めない国もあるわけです。そういうことを平気でいう人がいる。  外国人に対する偏見を持った人の意見だから軽く見て良いといわんばかりという人もいましたが、それは関係ないことでしょう。例えば、安倍首相への批判に対して、安倍さんが「もともと自分に対して偏見を持っている人、私のことを嫌いな人の批判などは正しいことでも聞く必要ない」といったらおかしいでしょう。  この偏見の話をしたのが民進党の岡田前代表です。私は移民にも賛成だし、外国人地方参政権も将来的にはありえるといっていますので、私はなにも排外的ではないのですが。

世界の二重国籍

 二重国籍は許される方向というのはウソ。もともと二重国籍は問題にされていなかったのが、ドイツとフランスの二重国籍の人が面倒なことになった第1次大戦での反省を踏まえ、できるだけ制限していこうとルール化が始まりました。  ただし、国際結婚やEU統合などで対象者が増えてきたし、現実に合わせないといけないので、少し柔軟にした状況もありました。  一方で、テロとかタックス・ヘイブンなどの絡みで、そもそも二重国籍を認めているからいけないのではないかという議論もあり、むしろ、きびしく運用する方向になってきている国もある。これはもういろいろです。  日本は原則禁止です。そうはいっても黙認している部分があって、それはブラジルのように国籍離脱を認めていない国もあるとか、国籍を抜くのに多額の費用がかかったり、時間がかかったり、極端にいうとワイロを渡したりとかややこしい国があるので、絶対にダメというと気の毒なことがあるからです。  それでも帰化の場合はきちんと運用していますが、ハーフの人や出生地主義の国で産まれた人の国籍選択の場合では、きちんとルール化しないで、「できるかぎりやってください」という運用です。真面目な人で苦労している人がいるなか、すぐに手続きが出来るのに、図々しく開き直っている人がいるというおかしな状況です。

基本スタンス

 これを機会に国籍の問題をきちんとするとすれば、基本的には、例外をつくって認めるのか、例外をつくらないが、実際的な不便に対処するために、従来と違ってそれで困らない措置をきちんと設けるか。現実的にはこれをミックスする方向ではないでしょうか。ともかく公平にやることが大事です。  ただ、一部の二重国籍を脳天気に肯定する人にいいたいのは、権利は2倍、義務は1つ、場合によっては“いいとこ取り”になるのは絶対だめだということです。バランスがとれないとおかしい。  もし権利が2倍なら、義務も2倍となります。重複しても所得税や相続税も2か国に払うべきです。兵役がいずれかの国にあるのであれば、それもやる必要がある。どちらかの国で禁止されていたらダメとかいうことにしてよいなら、権利も2倍要求できますが、それでは困るでしょう。  違う国の親を持つ子供は、一方の親の国を選ぶ必要があります。22歳までに選ばなければいけないことに対して、「それは片方の親を選べということで可哀そうだ」という人がいます。  しかし、帰化の場合にはもとの国籍を捨てなければいけないし、一方の親の意向を選択しなければいけないことなど、人生においては、結婚でも就職でも、いくらでもありえるのですから、そういう極端ないいぐさをするのはおかしいでしょう。 【八幡和郎(やわた・かずお)】 1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、現在、徳島文理大学大学院教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『世界と日本がわかる最強の世界史』『皇位継承と万世一系に謎はない』(ともに扶桑社新書)、『誤解だらけの京都の真実』(イースト新書)、『最終解答 日本近現代史』(PHP文庫)ほか多数。
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