蓮舫民進党代表の二重国籍問題と激変する世界(第5回)

現在にも通じる移民問題

 蓮舫さんのお父さんも移民ということでしょうが、世界史を見ると、移民というのは昔からありました。歴史を見ると、日本へも大陸から多くの移民がいましたし、日本から外国への移民もありました。移民が世界をよくした面もあったのは確かです。しかしながら、移民、それに難民の弊害も歴史上にはある。  近頃では、トランプ当選の原動力ともなったアメリカの移民問題、EUへの難民流入、それに伴ったドイツの自信喪失などがあります。なぜこうなったのか。それは、移民を入れるかどうかということは自分の国を変えるのか否かということで、受け入れる側の選択の問題であるのに、それをきちんと受け止めていなかった結果ではないでしょうか。  難民に関していうと、彼らのもとの国の生活に比べてよい生活ができるなら、ややこしいことになると思います。もとの生活を棄てても逃げていくから難民なのであって、もとよりいい生活ができるなら、難民の流出が無限に止まらなくなって、もとの国も崩壊するし、受け入れ国にとっても大変な負担になります。  日本に百済から「移民」がやってきたときも、全国に分散させて政治勢力を形成させないようにしました。  今、アメリカなどは各人種が政治勢力化していますが、これはまずい。歴史から学んでいない。外国から人が入ってくるのはいいことではあるのですが、それをどう受け入れるかは受け入れる側の国が主体性をもつべきです。私は移民を日本に入れることは賛成ですが、きちんとコントロールすべきだと考えます。

外国人に理解してもらう

 世界のことを知らずに日本のことだけをいっても理解されない。一方で、日本の立場を語る際には、外国の人がわかるように伝えないといけません。聖徳太子のことを話したいなら、最低限、世界史の同年代のことを知っていないとだめでしょう。  私の子供時代は西洋の古典文化を翻訳で読めましたが、今では古典を読む人が減りました。というより、そのような本を見かけなくなった。  ギリシャやローマの古典、あるいはキリスト教を知らずに西洋人と話すのは、単純に無謀なことです。ある程度の立場の人は、歴史に限らず幅広い教養を備えています。中国人は中国の古典文化がわからなくなっていますが…。  東洋の場合、特に中国や韓国(北朝鮮も)には国定の考え方しかありません。一方の日本人は、日本政府の立場というものを教えてもらえていない。政府もやっていない。日本では研究者にも本の読者にも韓国史は在日の人が多い。だから、日本語の韓国史の本は日韓関係の歴史をほとんど韓国の立場から書いている。でも、日本国家の立場からみた韓国史が必要だと思います。  中国についても同じです。中国が中心という考え方を、中国がいう以上に日本が唱えている。これなどは、戦後史観の中でアンチ皇国史観として出てきた政治的な考え方です。日本だけで通用するもので、世界中のどこにもない考え方が支配しているのです。

戦略的に歴史を語る

 この本には世界史の通史ですから現代までを載せていますが、トランプ大統領の誕生とその背景まで書いています。トランプ現象が世界史的意味を持つと考えたからです。さすがに蓮舫さんのことは載せていませんが、二重国籍問題についての脳天気な日本人の反応を見ていると大変なことが起こりかねないと思う。  二重国籍は首相候補として相応しくないと言えば「人種差別だ」という人がいるし、蓮舫さんの過去の発言から日本国家に対する忠誠心が不足しているのでないかと言ったら、「国家への忠誠などというのは、恐ろしい戦前のような考え方だ」という人がいた。そういう人は、自分の考えが世界の中でいかに非常識か、勉強した方が良いと思います。  日本が世界に対して、日本の立場を主張するためにも歴史の事実を知ることが大事なのです。でも、それ以上に、日本人は得られた知識を、世界に向けて戦略的に堂々と主張する必要があると思います。 【八幡和郎(やわた・かずお)】 1951年滋賀県生まれ。東京大学法学部卒業。通商産業省(現経済産業省)入省。フランスの国立行政学院(ENA)留学。大臣官房情報管理課長、国土庁長官官房参事官などを歴任後、現在、徳島文理大学大学院教授を務め、作家、評論家としてテレビなどでも活躍中。著著に『世界と日本がわかる最強の世界史』『皇位継承と万世一系に謎はない』(ともに扶桑社新書)、『誤解だらけの京都の真実』(イースト新書)、『最終解答 日本近現代史』(PHP文庫)ほか多数。
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