仕事

タイで「おっパブ」を立ち上げたバイタリティ溢れ過ぎの日本人

「売春」以外の生きる道

 田附氏は新サービスに抵抗感を示すスタッフひとりひとりに思いを伝えた。ただ、このことが、タイの貧困層出身の女性にとって、今までとは違う「お金の稼ぎ方」の道を提供することになったのである。  というのも、タイで売春をする女性はほぼ100%が貧困が理由になっている。自分の子どもや兄弟、親を養うために自分を犠牲にするのだ。遊ぶカネ欲しさに売春をする女性は近年にやっと少し見られるようになったくらいだ。日本以上に格差社会・学歴社会のタイでは低学歴の地方出身者が手っ取り早く儲けるために売春や麻薬売買に手を出すのが普通だった。  そんな彼女たちにとって、売春以外の道を示したのである。 「私はF1をおっパブというより『おっぱいカラオケ』と位置づけて考えていますが、その方針を何度も説明しました」

左が田附裕樹氏。彼がバンコクで最もおもしろいというのがニューハーフたちとの交流。この美人ふたりもまたタイ人ニューハーフである

 もちろん、その分プロとしてのサービスを教えた。 「お金に対しての執着心はあるくせに仕事に対してのプロ意識が欠如していたんです。夜の街で働くタイ人女性はただ漠然と身体で稼ごうとする人が少なくなかった。いい意味でも悪い意味でも素人感覚が抜けていなかった。そこにサービス業としてのプロ意識を理解してもらいました。時間や約束を守ることや責任を持つことを一から教えました。もちろん、それでも時間や責任にルーズな人がいる。そんなスタッフは置かない。しかし、これは突き放しではなく、単に不適正であれば引き留めても互いに時間の無駄、ほかに天職を求めればいい、という考えです」  田附氏は自身もバンコクにある様々なタイプの店で遊んでいる。そんな中で感じたことがある。 「ゴーゴーバーなどはなんとかしてペイバーさせようとすることだけが前面にあります。それではただの置屋です。うちはペイバーを強要せず、しても楽しめるし、しなくても満足できる顧客主体の店にしようと決めました」  こうした理由もあって、「Sexy Club F1」は性風俗店というよりは、カラオケなども楽しめる、あくまでもバーなどのジャンルだということを前面に打ち出しているのである。
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タイならではの難しさ
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