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「いつどこで大地震が起きてもおかしくない」JESEA地震科学探査機構・村井氏が警鐘

JESEA地震予測の真偽とは

 日本列島に起こっている大きな地殻変動、果たしてその真偽とは……。まず、世間でよく聞く地震の“予知”と“予測”とは一体なにが違うのか。 「地震予知とは政府が出す警報。いわゆるXデーが具体的に言える状態。これはまだ誰にも出来ません。一方で、予測とは数か月の精度で言える状態のことを指します。我々が行っているのは地震予測です」 ・地震予知…いつどこでどの規模の地震が起きるのか警報レベル(具体的な日にち)で言える状態 ・地震予測…いつどこでどの規模の地震が起きるのか数か月の精度で言える状態  だが、そもそも村井氏は地震学者ではない。測量工学の専門家である。だからこそ、地震予測ができるのだという。 「地球は常に動いています。地球がどのぐらいどうやって動いているのか。そこで測量の知識と経験を活かせば、地震予測ができるのではないかと考えたのです。地球を動いている新幹線にたとえると、何メートル動いているのか、新幹線のなかにいてはわかりません。そこで私は測量の専門家として、地球の外にある人工衛星(電子基準点のデータ)を使う。従来の予測では、過去の地震記録から『いつかは大地震がくるかも』という程度でした。しかし我々は、“今”の地殻変動から異常を発見し、予測することができるのです」 橘田 さらに、JESEAの橘田寿宏代表がこう付け加える。 「昨年、熊本地震がありました。それから約1年、NTTドコモの協力で九州にプライベート電子観測点も出来ました。そのデータを利用して予測の精度を向上させています」  国土地理院の電子基準点では1日1回の平均化したデータしか出ないが、それに加えて、プライベート電子観測点では数時間に1回のデータが得られることになるという。  また、最近はそれだけでなく、地鳴りの音を調べる取り組みなど、新たな研究開発に挑戦しているそうだ。

たとえ外れても「情報を出すことで救われる命がある」

 では、なぜ村井氏は地震予測をはじめたのか。その根底にどんな想いがあるのか。地震予測は世界で誰も成功していない最も難しい科学技術である。これについて村井氏は、東日本大震災のときに科学者として悔悟の念が強かったのだと言う。 「じつは東日本大震災の前、電子基準点を使っている企業から『データの異常の真偽を判断してくれ』と依頼がきていました。私はそのとき異常があると知っていながら、情報を発信する場がなかったんです。当時、守秘義務もありました。それによって多くの方が被害を受け、お亡くなりになられました。悔やんでも悔やみきれません」  そして、週刊MEGA地震予測で情報を配信しはじめたのが2013年。だが、予測が外れてしまったときに批判を受けることは怖くないのか。 「地震予測に対して『当たる・当たらない』に惑わされることなく、異常を知っているのなら『異常は異常』として情報を出すことが大事。それによって救われる命があるのなら私は構いません。当たらなければ、それはそれで幸いだったということ。どちらが罪深いか、ということですね」 【村井俊治】 JESEA地震科学探査機構・取締役会長/東京大学名誉教授。国際写真測量・リモートセンシング学会・日本測量協会の会長を務めるなど、世界の測量工学界をリードしてきた経験を持つ。現在は、約5万人以上の会員に『週刊MEGA地震予測』および『nexi地震予測』を配信中。 <取材・撮影・文/藤井敦年>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):@FujiiAtsutoshi
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