今後、大麻は品質が求められた贅沢品になる?
これまでアメリカで消費されている大麻の多くがジャマイカやメキシコ、中南米からの輸入品だと言われている。だが、合法化によって、国内での生産も増えていくことだろう。ゴンザレス氏は今後、特に大麻は「
品質が求められた贅沢品」に変わっていくと見ている。
「これまで大麻を生産してきたジャマイカやメキシコの連中が『
昨日今日で大麻の栽培をはじめたアメリカに、俺たちが長年培ってきたノウハウが負けるはずがない』と言っていた。どこか
農産物の産地同士の争いにも見えましたね。語弊があるかもしれませんが、ケミカルのドラッグでもない限りは、(極論を言えば)大麻は農産物なんですよ。最終的には、どこの産地がいいとかそういう話になってくる。要するに、
合法である以上は、消費者側も堂々と選ぶようになるでしょう。アメリカでは今、そうなりつつあると感じました」
ジャマイカの大麻畑
一方で、アジアでの大麻事情はどうなのだろうか。
「フィリピンのドゥテルテ大統領が麻薬を撲滅しようとしていますが、アジアのドラッグ事情としては、一般の目には触れないところで
根深いものがある。たとえば、裏社会の人たちと話をしていても『大人になるまで一度も大麻やドラッグを見たり触れたりしないで生きてこれるのはよっぽど幸運だよね』という言葉が出てきます。にも関わらず、
アジアでは売買でも死刑になるなど、罰則が厳しい国もある。おおっぴらにはヤレない分、裏では意外な人(真面目そうだったり、地位がある人、女性や未成年)まで手を出していたりする。アメリカ人は逆に慣れすぎているというか、普段から接する機会が多いだけにパーティドラッグとして、その場だけ楽しむだけに留めることもできる人が多いのですが、アジア人は一回ハマってしまうと、個人で掘り下げてしまう傾向がある。おかげで覚せい剤などの依存症から抜け出せなくなってしまうような状況に陥りかねない。身の持ち崩し率が高く、大きな事件を起こしてしまうこともある。だからこそ、日本人には一度でも麻薬を触った人に対する周囲の拒否感も強いです」
では今後、どのような動きを見せるのだろうか。
「アジアだと中国がいま、アメリカと同じように大量消費しています。シャブなども含めて。そのせいで、周辺国では値上がりが起こっている。一方で、技術の進歩により各国が自前で生産できるようにもなってきている。ただし、そんな流れがあるとはいえ、前述のとおりアジアでは秘匿性が高いので、この先もドラッグを完全に受け入れることはないだろうと思いますが」
アジア人の感覚では、どうしても麻薬のなかの一種として大麻を“悪いもの”として見てしまいがちだ。もちろん、現在の日本では違法薬物であり、絶対に手を出してはならない。しかし、海外を見渡してみれば、比較的寛容に受け止められていることをご存知の方も多いはずだ。
「アメリカやヨーロッパでは、ハードなドラッグにかんしてはヤバいと思っているにせよ、マリファナなどのライトなドラッグにかんしては、
そもそも“悪い”という発想がないんです。また、ジャマイカでは大麻農家さんをインタビューした際に、こんなことを言われました。『太陽の光を浴び、大地に根を張って生えている大麻。それを自然の風にさらして乾燥させ、火をつけて吸うことのどこが悪いんだ?』。彼らのなかでは、タバコや酒のほうがよっぽどカラダに悪いという認識なんです」
要するに、
国や地域によって根本的な考え方が違うのだ。
「もはやアメリカでは、大麻をこれまでの麻薬問題と同一視することは難しいと思います。ハードドラッグにかんしては有無を言わさずに違法でいいと思いますが、こと大麻にかんしては流れが変わりつつあることは事実ですね」
<取材・文/藤井敦年、写真提供/丸山ゴンザレス>
明治大学商学部卒業後、金融機関を経て、渋谷系ファッション雑誌『men’s egg』編集部員に。その後はフリーランスとして様々な雑誌や書籍・ムック・Webメディアで経験を積み、現在は紙・Webを問わない“二刀流”の編集記者。若者カルチャーから社会問題、芸能人などのエンタメ系まで幅広く取材する。X(旧Twitter):
@FujiiAtsutoshi