ニュース

朝鮮半島有事の“武装難民”に自衛隊は発砲できない。不幸な事件がおこる前に…

「自衛隊ができない30のこと 14」

 麻生太郎副総理が「武装難民が来たら射殺するのか」といった趣旨の発言をして話題になりました。朝鮮半島有事には、戦乱を避けて多くの戦争難民が北朝鮮、韓国から逃げ出すと予想されています。そのうち数十万人の難民が小型ボートや漁船などに乗り込み、海を越えて我が国に押し寄せる可能性があると言われています。
自衛隊

陸上自衛隊Facebookより

 四方を海に囲まれ平和に過ごして来た日本人は、身近に水爆実験を行いICBMを領海近くに撃ち込んでくる国があるのに、なぜか自分たちの安心安全な生活は続くと考えているのです。しかし、9.11同時多発テロの経験を持つ米国はそうではありません。先頃トランプ大統領がニューヨークの国連総会で北朝鮮のことを「ならず者国家」と呼び、やむをえない場合には「完全に破壊する」と言う内容の演説をしました。外からの軍事攻撃の恐怖を知っている国は、その問題に敏感に反応するのです。  さて、紛争が起こった際には北朝鮮からの大量の難民が小型船などでやってくることが予想されます。難民はそれぞれ身の回りの物をもって身近な海岸から思い思いの方向へ船出し、たどり着けそうな陸地を目指します。日本の海岸線は長い。よほどの切り立った断崖でなければ上陸が可能です。  大きく報道されることがないので知らない人も多いのですが、朝鮮半島からと思われる不審な木造船などが海岸に乗り捨てられている事件は今も起こっています。たとえば、今年の7月12日、青森の外ヶ浜町平舘漁港で陸揚げされていた木造船が爆発し、異臭が発生した事件が日テレニュースで報道されていました。この船は遺留物から北朝鮮の船と考えられているようです。北朝鮮や韓国の難民船も日本のどこかの海岸にたどり着ける可能性は高いのです。  難民船を取り締まるのは海保の仕事です。しかし、海上保安庁の巡視船は現在でもカツカツの運用で、しかも老朽化しているために速度も出ません。通常、不審船を見つけた場合は立入検査をし、不法入国者であればその身柄を巡視船に移し、乗って来た難民船を曳いて帰ります。でも、大量の難民船が来た場合、巡視船がそんなことをしている間に他の船は次々と陸地に到達し、思い思いに食料と居住場所を求めて上陸するでしょう。日本の広く長い海岸線すべてに警察の目が光っているわけではありませんから、各地の民家に食料、水、そして居住場所を求めて大量の外国人がやって来ることが容易に想像できます。不法入国者に対処できる捜査権を持っているのは自衛隊ではありません。海保です。  麻生副総理が言うように、難民の中に朝鮮半島から来た工作員が紛れ込んでいる可能性もあるのですが、一般難民の中に紛れている工作員は簡単に判別できません。明らかに武装したテロリストであれば海上警備行動が発令される可能性も出ますが、かなり難しいのです。当たり前ですが、戦闘員じゃない外国人にいきなり発砲はできません。犯罪者としての検挙は海上保安庁や警察の仕事です。自衛隊は難民に対処できないのです。  海賊対処中のロシア軍がAk630と思われるCIWS(近接防御用の兵器)で海賊を撃っている動画がYouTubeにあります。一瞬で海賊船が木っ端みじんに引きちぎれていました。軍の持つ兵器の能力は高いのです。自衛隊もそういった様々な装備品を持っています。兵器の能力だけの話ならば、自衛隊も一瞬で難民船を木っ端みじんにできる武力を有しています。しかし、一般難民に対する武力行使は国際法でも国内法でも違法です。当然、攻撃などしません。海保が対処し切れず右往左往していたとしても、それが一般難民であれば犯罪者検挙です。自衛隊は何もできません。つまり、不法入国者が指示に従わず、抵抗してきた場合の正当防衛射撃と難民に紛れた武装テロリストに対し海上警備行動が発令されている場合以外は撃っちゃダメなのです。  我が国は難民の保護と救済のための「難民条約」を批准しています。条約難民は保護対象なので、まず条約難民かどうかを認定審査することになります。戦争難民はこれまで審査中には仮上陸を許され、指定された区域内での居住と活動を義務付けられるものの、かなり自由に生活することができていました。でも、仮上陸中の難民が所定場所から逃げ出しても、入管や警察には追跡するだけの人員も能力もありません。
次のページ right-delta
EUでは難民が大きな社会問題に
1
2
おすすめ記事