目黒の“全日本女子プロレススポーツクラブ”――フミ斎藤のプロレス読本#131[ガールズはガールズ編エピソード1]
ボスたちはプロレスラーの感性をよく理解している。
「あれはいい選手なんだけど、自分でなにかをやる、ってタイプじゃないからねえ。困ったもんだよねえ」
「あの選手はしんどいですよ。心が悪いから」
「あのレスラーは、ちょっと変わるとたいへんな選手になるんだけど、まあ、本人の問題ですけどね」
江戸っ子の高司会長は“ひ”と“し”が同じ発音になる。
東京・目黒の全日本女子プロレススポーツクラブは、日本でただひとつのプロレス総合商社ビルである。道場があって、レスラーたちがいる。事務所があって、働き者のスタッフがいる。
ソフトウェアとハードウェアがいっしょになって“プロレス”が構築されていく。東京ドームで大イベントを開催したからといってローカルの〇〇駐車場横特設リングのスポット・ショーをやめてしまうわけではない。
天気がいいときは高司会長は焼きそばのタマ200個を軽トラックに積んで会場に向かう。露店がなかったらどうもプロレスの興行という感じがしない。夏になればオープン(屋外)の試合がぐっと増える。巡業の原点はお祭りだ。
松永ブラザースは、お祭り騒ぎのあれこれいっさいがっさいをひっくるめて“プロレス”と考えている。だから、リングの上で起こっていることだけを論じてもプロレスを論じたことにはならない。
「なーんだ、あんたもプロレスが好きなんだねえ」と笑われてしまうのである。
※文中敬称略
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文/斎藤文彦
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