ニュース

黒染め強要された大阪の女子高生は、歴史を前進させる戦いに挑んでいる――鴻上尚史

「金髪の留学生でも黒く染めさせる」規則

 この女子高生は、入学前に、生まれつき髪が茶色であると学校側に告げると、「その髪色では登校させられない」と黒染めを求められました。  女子高生はその指導に従い、黒く染め始めましたが、1年たつ頃に頭皮が荒れ、痛くなりました。  母親は抗議しましたが、学校側は「黒にするのがルール」と認めませんでした。皮膚は荒れ、髪はボロボロになりましたが、「染め方が足りない」と4日に1度の頻度で注意されました。  また、「母子家庭だから茶髪にしているのか」と言われたり、厳しい指導の際に過呼吸で倒れ、救急車で運ばれたりもしました。文化祭や修学旅行には茶髪を理由に参加させてもらえませんでした。  昨年9月には、「黒く染めないなら学校に来る必要はない」と言われ、不登校になりました。3年生になった現在は、クラス名簿に彼女の名前さえありません。  生徒の代理人弁護士には、学校側は「たとえ金髪の外国人留学生でも規則で黒く染めさせることになる」と答えています。  もう狂っているとしか言えません。これが教育者の言葉でしょうか。トランプ一家の親戚か誰かが何人か転入してくれないかと思います。本気でアメリカ人の髪の毛を染めるつもりなのか。本当に染めたら、間違いなく国際問題です。それを、この府立高校の校長と教頭は受けて立てるのか。そして大阪府の教育委員会も。  ネットでは、「茶髪の生徒が増えると近所が『あの学校は乱れてる』と判断して、評判が落ちるし、質のいい生徒は来なくなるから指導しているんだ」という文章がありました。それと、外国人留学生を黒染めすることは何の関係もありません。  提訴した彼女は、必死の思いでしょう。苦しいと思います。周りからいろいろと言われているかもしれません。  ドロシーさんは、やがて大学を卒業し、育児保育団体でカウンセラーとして働いたそうです。彼女の戦いが愚かな人々を照らし、歴史を前進させました。  大阪の彼女の戦いも同じ意味があると、大げさではなく心底思います。彼女を負けさせたくない。本当に応援したい。  このSPA!の文章が彼女の目に届き、ここにも応援している人間がいるのだと伝えられたらいいと願います。あ、でもエッチな特集があると親は見せたくないか(笑)。 ※「ドン・キホーテのピアス」は週刊SPA!にて好評連載中
ドン・キホーテ 笑う! (ドン・キホーテのピアス19)

『週刊SPA!』(扶桑社)好評連載コラムの待望の単行本化 第19弾!2018年1月2・9日合併号〜2020年5月26日号まで、全96本。
1
2
この世界はあなたが思うよりはるかに広い

本連載をまとめた「ドン・キホーテのピアス」第17巻。鴻上による、この国のゆるやかな、でも確実な変化の記録

おすすめ記事